【193】 H君のこと~ワサ2・稲沢鉄道寮

稲沢鉄道寮は東海道本線と操車場を横切る陸橋のそばにありました。陸橋のほうは広い操車場を横切る主要道路で、自動車は深夜でも多く走り、鉄道のほうは幹線である東海道本線なので、深夜でも列車は行き交います。加えて操車場の入換作業も24時間行われているので、列車と自動車の騒音で、うるさいところでした。夏場はエアコンも部屋にはありませんでしたので、ベランダのドアを開けていますと、蒸し暑さも手伝って熟睡できませんでした。 寮の同じフロアにH君が住んでいました。彼は私がこの寮に入る前からこの寮に住んでいました。 私が鉄道が好きで国鉄に入ったことを知っているH君が、私の部屋へ来て「寮の前にワサが止まっとるぜ」と私に教えてくれました。何のことだろうと思って、カメラを持って寮の正面玄関から外へ出ると、目の前の線路上に、なるほど「ワサ」が止まっていたのです。 形式は「ワサ1」でその2号車に当たります。 一見、ありきたりのワム80000に見えますが、車長がちょっと長くて、屋根がリブ付きでなく、ツルンとしています。 べつに鉄道が好きだったわけでもない彼でしたが、よく気が付いたものと思います。 写真の手前がワサで奥がワムです。 そして最も特徴的なのが、足回りです。ワサは3軸車なのです。 こういう形式があることは知ってはいたのですが、実際に近くで眺めたのは後にも先にもこの時だけでした。 試作車的な車両だったので製造されたのはわずか2両、そのうちの1両は試験車「ヤ81」に改造されて3軸車ではなく普…

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