【545】 旧形客車の暖房

3週続けて電車と気動車の暖房について書いてきました。旧形客車の暖房についても引き続き書いておこうと思いますが、以前にも複数の記事で客車の暖房について書いたことがあります。このため今回は、繰り返しになったり、以前の記事をそのまま引用する形になりますが、画像を多く使いながら、まとめの意味として書いておくことにします。 ************************** 自ら動力装置を持つ電車や気動車と異なり、機関車に牽引してもらう旧形客車は、暖房も機関車にその熱源エネルギーを依存していました。旧形客車では蒸気暖房が古くから採用されており、それは蒸気機関車から蒸気を客車に引き込んで、車内に設置した暖房放熱管から放熱させて車内を暖める方式でした。上の画像は室木線の客車列車ですが、客車からも蒸気が漏れていることがわかります。 蒸気機関車が減っていき、電気機関車やディーゼル機関車が牽引する区間が増えていくと、そういう区間では暖房車という蒸気発生用のボイラを装備した車両を冬季だけ客車列車に連結して暖房する方法が採られるようになりました。燃料は石炭でしたから煤煙が出ました。画像はその暖房車の模型です。その後、旅客用の電気機関車やディーゼル機関車には重油または軽油を燃料とする暖房用蒸機発生装置(SG)を機関車に装備して、その蒸気を客車に供給する方式が採られるようになりました。下の画像は蒸気発生装置を装備しているEF61です。屋根上と前端下部暖房主管連結部から暖房用の蒸気が漏れています。後ろのほうの客…

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【544】 スチール棚の企画展3:ジョイフルトレイン(後篇)

「スチール棚の企画展」今回も国鉄時代に誕生したジョイフルトレインたちの後篇です。すべて機関車が牽引する客車です。機関車との組み合わせは線区によってバリエーションが豊富なので、その意味では「統一感がない列車」と位置付けられる場合もありますが、専用色の機関車まで用意して、統一感を求めたジョイフルトレインもありました。これらのうち、乗務したことがある編成については、過去に記事にしていますので、そのリンクを交えながら、各編成を簡単に順にご紹介していきます。全部で10編成ありますので、先週に引き続き、今回は後半5編成を登場させます。 ************************** ●東京南鉄道管理局の和式客車スロ81系「シナ座」  旧形客車のグリーン車スロ62・スロフ62から改造された6両編成でした。12系や14系から改造されたジョイフルトレインが主流になる以前の古い車両で、類似の和式客車は他局でも多数存在しましたが、2本の白線が入っていたのは、改造時期が遅かった東京南鉄道管理局「シナ座」と大阪鉄道管理局の「ミハ座」だけでしたので、この2編成はブルートレインのように格が上のような感じに見えました。国鉄末期に前篇で登場したお座敷列車「江戸」と交代する形で水戸鉄道管理局へ転属し、「ミト座」として茶色塗装にグリーン帯という国鉄全盛期の1等車を思わせる塗装に変更されて、分割民営化後以後まで活躍しました。 しょせんは旧形客車。暖房熱源エネルギーを機関車から受ける必要がありましたので、冬場の運用で…

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【543】 キハ58系の暖房調節~武豊線920D~925D

先週書いた記事で、暖房の温水放熱管からの水漏れがあったお話をしました。列車や線区について何も書きませんでしたが、それは名古屋から武豊線に直通する列車でのことでした。その武豊線は先日、JR東海から平成27年3月1日に電化開業するとの発表がありました。武豊線での長かった気動車時代に幕が下りようとしています。その水漏れがあったのは、朝の一番列車920Dで、武豊で折り返し925Dとなって名古屋まで戻るキハ58・28を主体とした8両編成(1980年~1982年5月当時)の列車でした。車掌はこの1往復に乗務すると、前日から続く乗務行路が終わりでしたが、車両のほうはそれからが本番で、この後は関西本線の急行「かすが」奈良行と急行「平安」京都行の併結列車になりました。今回の記事では、その名古屋~武豊の920D~925Dの一往復を例に、暖房調節のしかたを思い出しながら書いてみます。 ************************* 冬場の920Dは、まだ明けやらぬ名古屋駅から武豊線に直通する一番列車でしたが、乗客は非常に少なく、いつでも乗客は数人だけの状態でした。けれども武豊に着いてから折り返す925D名古屋行は、通勤時間帯の7時台に名古屋駅に到着する列車だったので、そうとう混雑しました。要するに、この一往復は、急行運用前の間合い運用で、925Dでの通勤輸送を目的とされた列車でしたから、往路の武豊行920Dは車両を送りこむためだけの回送的な列車でした。そのため通勤輸送需要の少ない休日は不要な列車というわ…

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【542】 スチール棚の企画展3:ジョイフルトレイン(前篇)

9月に「スチール棚の企画展2:統一感がない列車たち」 (前篇)と(後篇)で、一編成中にバリエーション豊富な列車を眺めて楽しんだあとは、統一感を持った列車の企画展示に戻しました。 今回は普段着の列車たちでなく、ビジネスユースでもない、国鉄時代に誕生したジョイフルトレインたちで、すべて機関車が牽引する客車列車です。こういうジョイフルトレインは、機関車との組み合わせが走行線区によってバリエーションが豊富なので、その意味では「統一感がない列車」と位置付けられる場合もあろうかと思いますが、専用色の機関車まで用意して、統一感を求めたジョイフルトレインもありました。展示したもののうち、乗務したことがある編成については、過去に記事をアップしていますので、そこへのリンクも交えながら、簡単に各編成をご紹介していきます。全部で10編成ありますので、記事は前後半に分け、今回は前半5編成を登場させます。 ************************** ●長野鉄道管理局の和式客車「白樺」  12系座席車から改造された6両編成でした。若葉と白樺の木をイメージしたらしい客車とは思えない明るい塗装が大いに目立ちましたが、さすがに汚れが目立ったのか、国鉄末期には黄緑色が濃い緑色に変更されたと思ったら、分割民営化後にはさらに別編成のように車体全体が濃緑色の塗装に変更されイメージが一変しました。自分的には登場時の塗装が好きです。ここでの牽引機関車は信州にもっとも似合うEF64の0番台です。 *******…

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【541】 国鉄気動車の暖房

先週に続きまして、国鉄車両の暖房の話です。今回は気動車です。 私が車掌だったころ、よく乗務していた気動車が急行形キハ58・28・65 通勤・近郊形キハ35、40、48などでした。これらの形式の暖房は編成一括での制御ができませんでした。そのため1両ごとに暖房状態を確認する必要がありましたので、厳寒期には暖房は入れられたままの状態にしていました。気温によっては車両によって暑すぎたり逆に寒かったり各車で車内温度のばらつきがありました。暖房の熱源はエンジン冷却水の排熱利用であって、自動車のヒーターと同じようなものです。(キハ55以前の気動車では温気式であり、特急形80系は発電機による電気式の暖房を採用していましたので、いずれも該当しません。) この中で、キハ40・48は当時の最新式で、電車のように編成一括での暖房制御こそ不可能でしたが、暖房方式は、エンジン冷却水を熱源としているのは他車と同じながら、温風をダクトで車内に送る温風式になっており、その入切は各車の運転台助士席背面にあるスイッチ操作で行うことができました。温風は外気を導入して熱していましたが、外気を遮断するスイッチも併設されていて、このスイッチを入れると温風は室内循環に切り替わり、厳寒期でも暖かい車内温度を保つことができました。さらに、隙間風が少ないことに加えて自動温度調節方式だったので、スイッチさえ入れておけば室内温度が下がることはなく、また極端に上がりすぎることもなく、安心して乗務できました。ただ、混雑時には暑すぎることがありました。…

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【540】 泡盛に学んだ沖縄

先般沖縄へ行ったときに、買ってきた泡盛「残波」 アルコール分は30%で、これは日本酒の約2倍になります。それでいて、沖縄のスーパーで購入した値段は1.8リットル紙パックで1,127円。たとえ紙パックの格安商品とは言っても、アルコール度数から考えるとかなり安いなと思ったのでした。飲んでみると、けっこう自分の口には合います(*^^)v 今後沖縄まで行くことはたぶんないので、通販でも買えるかな?と通販サイトをいくつか覗いてみましたら、買えるショップは数多くあれど、送料は除いても意外にもそんなに安い値段では販売されていませんでした。この記事をアップした時点で最安1,338円となっていて、だいたい200円程度は高いのでした。 そのわけをいろいろと調べていましたら、1972年に沖縄が本土復帰されてから沖縄県産酒は「沖縄県内消費分に限って」酒税軽減措置がとられているという事実にたどり着いたのでした。現在の「沖縄産で沖縄消費分」の酒税税率は本則の65%になっていて、これは5年間という時限措置が延長を繰り返されてきたらしい。要するに沖縄産の酒類は沖縄で買えば安い。 ここで私の行動について省みると、沖縄県内のスーパーで買った泡盛は1.8リットルの紙パック1本でしたが、現地で飲むつもりはなくて、もともと持ち帰るつもりで、買ってから他の土産品などとともにホテルから宅配便で発送して家に届いたものです。ここで、沖縄県内消費を前提とする軽減税率が適用された泡盛を本土へ持ち込んだ場合の、酒税の差額分をどうすればい…

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【539】 国鉄電車の暖房

このところ、急に寒くなりました。今週から年内の毎月曜日は国鉄時代の暖房事情についての記事にしようと思います。第一回目は国鉄電車の暖房についてです。 私が車掌だったころ、よく乗務していた電車が通勤形103系、近郊形113系・117系、急行形153系、165系特急形381系でした。これらの系列の電車はすべて、車掌が乗務する最後部運転台で編成一斉に暖房の入切の操作が可能でした。 当然のことですが、特急・急行形と新しい117系に比べて、ドアの数が多く独立した出入台がない通勤形や近郊形の暖房効率はよくありませんでした。それでも113系のうち後期車2000番台の暖房は効きましたし、神領区の103系は、国鉄末期に豊田区から転入した4両を除き暖房強化改造がされていました。また、117系と381系は、自動暖房温度調節機能があり、あらかじめ各車の配電盤でセットしてある適正温度を保てるようになっていました。それ以外の系列では、気候によって車掌が最後部の暖房元制御スイッチ(①と②の2回路あり)を手動で操作して温度管理をしていました。特に153系や165系のような暖房効率が良い急行形では、2回路とも暖房回路を入れてしまうと暑くなりすぎることがありましたし、気候によっては103系や113系といった近郊形や通勤形でもそれは同じでしたから、乗務中には2回路ある暖房元制御スイッチを片方だけにしたり、一時的に2回路とも切ったりと、こまめなスイッチ操作をする必要がありました。 暖房器は座席の下にあります。急行形の場合では2回…

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【538】 有田鉄道線の貸切列車

以前に、平成の世になっても昭和時代の伊勢線以上にローカルな体験をした京福電鉄永平寺線のお話をしましたが、そのほかにも、プライベートでの旅先で、ローカル線ならではの体験をしたことがありました。それは、1995年(平成7年)に有田鉄道(ありだてつどう)へ行った時のことでした。 この鉄道は2002年(平成14年)12月31日限りで廃線となってしまいましたが、訪問時点でもすでに廃止は避けて通れないような運行状態でした。休日には全列車が運休し並行する同社路線バスが代行輸送。平日でも列車の本数は最小限で、午前中3往復と午後1往復しか列車の運行がされず、あとはバスが代行していた時期でした。通常運行している車両も超小型車で、少し前に樽見鉄道から移籍したハイモ180という2軸のレールバス「LEcarⅡ」1両だけでワンマン運転を行っていました。樽見鉄道時代の水色だった車体塗り分けをそのままに、ベージュに塗り替えられた移籍後の姿を一目見たかったのが、このとき有田鉄道を訪問した動機でした。 出かけたのは、夏休み明けの9月1日金曜日。行程上、午前中の列車には間に合わなかったので、JRの接続駅藤並から並行するバスを利用して車庫がある終点金屋口まで行きました。ここから午後運行されるただの一本だけの金屋口発15時38分発藤並行列車でハイモ180に乗ることができました。 金屋口駅の出札窓口は閉鎖されていましたが、待合室には何人か人の姿がありました。しかし誰一人として列車に乗る気配はありません。どうやら外仕事の人た…

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【537】 国鉄伊勢線7:置石

伊勢線のお話は、今回で終わりになります。 今回も、奇しくも脱線事故と同じ区間である伊勢線の河芸~中瀬古間(伊勢鉄道線に転換後に伊勢上野駅が開業しましたので、現在の伊勢上野~中瀬古間にあたります。)での出来事でした。 時は昭和58年○月〇日。あの脱線事故から約1年後の夕方、津から四日市へ向かう130Dに乗務中のことでした。この列車は下校時間にもあたっていましたので、乗客も30人くらいはあったように思います。 列車が伊勢線唯一の短いトンネルの中で非常ブレーキがかかって停車しました。 下の画像はそのトンネルの現状ですが、当時とそれほど変わった感じはしません。複線用として掘られたトンネルですが、今でも単線のままになっています。 運転士から車内電話で 「置石やられたわ~。ちょっと前まで来てくれんか。」 短いトンネルで中瀬古駅寄りの出口付近での出来事でした。レールを見ると、片方のレールだけが砕かれた石の粉末にまみれていました。その範囲は長く続いていて一つや二つの石ではないことが判りました。 車内放送で、 「置石がありましたので、しばらく停車します。」 と放送して、乗務員室ドアからトンネル内に降りて、レールと車輪を気にしながら先頭車両へ向かいましたが、この間、線路は砕かれた石の粉にまみれていましたが、脱線はしていませんでした。そのまま先頭まで行くと、さらに驚くべき光景を見たのでした。 停車した列車の行く先のレール上には、まだ石が並べられ、通信ケーブル埋設用のコンクリート製の蓋までも…

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