【806】 車内の遺失物
列車から降りたお客さんが、「しまった!鞄を忘れてきた」と気が付くと、下車駅で申告しますね。私も小学4年生のころに、母と一緒に出かけた帰り、母の買物袋を持たされて列車に乗った際、うっかり車内の座席にその買物袋を置きっぱなしにしてきてしまい、駅で降りて駅前広場に出て母に言われてから気付いて慌てたことがありました。
あのときは母にこっぴどく叱られ、高学年にもなってあまりにも責任感がないなど責められた挙句に、事後の手続きを全部自分でやるよう言いつけられ、半泣きで駅に捜索依頼に行きました。駅では何両目のどのあたりに乗ったのかを聞かれたのですが、私の場合は意識して機関車の直後の客車に乗りましたし、進行左側中央付近に乗ったことははっきり覚えていましたから、すらすらと答えられました。
重大な失敗をしたその日のことはよく覚えているもので、買物袋の色や柄などの特徴は今でも記憶に残っています。また、当時DD51が主に中央西線の旅客列車用として稲沢第一機関区に非重連タイプ46~50の5両だけが配置され、普通客車列車の一部がDL化された時代でした。その名古屋行き普通列車はDD51 50の牽引だったことも、駅前広場で忘れ物に気付いた直後に、視界から去っていく列車の光景さえも記憶にはっきり残っています。幸い買物袋もその中身も後日戻ってきました。いったん自分の手を離れたものが戻ってきたことで、駅の人だけでなく国鉄のいろんな人の手を煩わせたであろうことは小学生でもわかり、申し訳ない気持ちと、手元に戻った喜びが同時に湧いてきまし…