【856】 車補のこと・腕時計のこと
先週は、乗客扱いの専務車掌は司法巡査に指定されたというお話をしました。司法巡査の証やバッジを紛失したら厄介なことになると書きましたが、毎日違った列車が職場になるのが乗務員ですから、このほかにも、乗務中には大切なものをいくつも身に付けなければなりませんでした。
紛失すると始末書では済まず厄介なことになるのは、車内補充券の類もそうでした。
(画像は私が旅行に行ったときに購入した他車掌区発行のものです。)
乗車券類は有価証券ですから、紛失したらただでは済まないことは当然です。以前にも書いたように車内補充券は魔法の切符です。どんな切符にも化けますから、拾得した人が書き方さえ知っていれば使い道は幅広いです。車内補充券の領収額欄の桁数は6ケタあり、一冊で50枚の切符が、複写の控片とともに綴じてありました。と、いうことは、1枚で999,999円までの切符が書けてしまいますから、未使用の1冊を紛失すると、最悪5000万円近くの払い戻しも可能というわけです。そんな金額で払い戻されることはないにしても、悪用される可能性は大いにありますから、出先宿泊先の車掌区で到着点呼をするときに、そこで売上の現金とともに車内補充券も貴重品袋に入れ、錠前で鎖錠のうえで翌日まで預かってもらうこともありました。
私どもの車掌区では車掌1人に車内補充券一冊ずつを専用で渡され、残りが少なくなると未使用の1冊を新たに持たされたので、2冊持ち歩くこともありました。発行枚数が多い行路のときには、そうでなくとも初めから複数冊の車内…