実際に営業している荷物車の車内の写真です。
荷札みたいなものが荷物に括りつけてあります。これは「切符」です。小荷物切符と言って、発駅・着駅・運賃・品名ほか必要事項が書かれています。これを見て仕訳作業をします。
始発駅では2mもある大きな荷物室扉から無造作に荷物が放り込まれますので、乗務すると発車前から作業が始まるのです。写真は行き先別に積みなおしたあとの姿です。ホームの左右を考慮し、取卸し駅の順に並べられ、途中駅で停車時間内に荷扱が完了するようにします。終点まで卸さない荷物は扉から一番遠い位置に固めます。
車両の向きが毎日ランダムで車掌室の位置が決められていないので、最初のうちはホーム側とは左右まったく正反対に置いてしまうという失敗があったものです。
荷物の積み方にもコツがあります。長年やっておられる先輩が積んだところは、列車の振動で荷物が崩れたりしませんが、駆け出しの私が積んだ荷物はすぐ崩れるのでした。
荷物が多いと車掌室から車内の天井直下を這うように荷物室へはいったものです。新人は車掌室から一番遠いところまで這ってゆき、先輩は車掌室側から、それぞれ車内中央に向かって荷物を仕分け積み上げながら車両の中央当たりで出会うといった作業でしたが、先輩の手際良さには到底かなうはずもなく、車内の3分の1を仕分けられればよいほうでした。駅名など多少知っていても、最初のうちは役に立たず一緒に乗務した先輩諸氏にご迷惑を掛けたものでした。


この記事へのコメント
アルヌー
荷物車の車内の写真ビックリです!
通路以外はびっしりですね。
もっと満載状態になると、荷物の上を這って行く様に進んでたなんて、外からは、想像も出来ませんでした。
仕分け作業など、本当に職人技だったんですねー。
乗務員の方じゃないと、撮れない写真、素晴らしいです!
\(^o^)/
しなの7号
まったく地味な仕事です。汚い作業服を着て汗まみれでの労働はカッコいいものではありません。
それでも、雨でも風でも構わず屋外で仕事をしなくてはならない貨車の入換作業に携わる人のように危険で厳しい条件での仕事に比べれば、乗務掛はよい仕事ではありました。
元二乗
【16】から引っ越してきました。車内小荷物の積み方について拝読し、郵便車の作業で頭を悩ませた郵袋の積み方を思い出しました。いろいろな形状の小荷物に比べて郵袋はどれも同じ大きさの袋に見えますが、角張った小包郵袋、形が定まらない通常郵袋(封書)など様々で、異なる大きさの小包をいくつか詰めた郵袋はサイコロ形というよりは台形に近く、駐在員により宛先がバラバラに積み込まれた郵袋を車内で降ろす駅ごとの区画に積んでいきますが、限られた面積でできるだけ高く、しかも列車の振動にも崩れないようにするのは熟練を必要としました。大阪から糸崎方向ですと、一番奥(車端)が九州方面、あと手前に行くほど近い駅になりますが、次々と読み上げられては飛んでくる郵袋を素早く、しかも崩れないようにがっしりと積み上げるのは苦労したものです。牽引するEF58はガンガン飛ばしたり前後にしゃくることがあるので、その都度山が不気味に動き冷や冷やしたもので、いちど岡山宛ての大きな山が崩れ、倉敷とごちゃまぜになり標札見ながら元通りにするのもひと仕事でした。熟練した人は、角張った小包を土台に、どうにでも整形できる封書郵袋をクッションにして変な形の小包もうまく載せ、全体が城の石垣に見える完璧な積み方をしました。これを「石垣積み」と言い、習得しようと懸命に練習したものです。小荷物では、硬くて角張ったリンゴ箱を下に、柔らかくて丸いふとん袋は上にするとかいう鉄則があったのでしょうか。
しなの7号
荷物の積み方では「石垣積み」に相当するのが「れんが積み」でした。下のほうには変形しないような重い荷物。ふとん袋は一番上で押さえつけて荷物が崩れるのを防いでもらう役割といったところです。ずいぶん気を配って積んだつもりでも、揺れる車内では崩れるもので年季が入った先輩には敵いませんでした。
元二乗
「れんが積み」は実に的確な呼び方です。車内の天井を這うというのは荷物車でもあったようですね。郵便車の郵袋室も天井までいっぱい積まれ、一番奥に積む遠方の郵袋も次第にドア付近に迫ってきました。少しでも詰め込むためには私たち若手が郵袋の山によじ登り、放り投げて来る郵袋を天井に密着するようにすき間なく詰めていきましたが、詰めるのが追いつかず飛んでくる方が多いので・・・
便長「○○くんが見えんやないか」
締切担務「広島に登って九州積んでまっせ、岡山の陰で見えんけど」
便長「九州後回しにしよ。これ以上積んだら生き埋めになるで」
という会話が郵袋の向こうで聞こえましたが、本当に私は生き埋め寸前でした。オユ12に例えますと、車掌室が原則門司側のため、東京側の方が車端まで積めますのでそちらに下りは九州全域、上りは東京都以遠を積み、駅で積む駐在も2箇所あるドアで積む区域を分けました。搭載区画図という指示書には車掌室も明記されていて、位置関係はすべて決まっていますが、たまに逆向きに連結されていたので、駅ごとに駐在員に「前後逆ですよ」と大声で言うと、台車を並べ直していました。転車台で回したのでもあるまいになぜなのか未だに謎です。荷物車では、常に車掌室の位置など固定していたでしょうか。また、車内の荷物は着駅、区間とか中継荷物ごとの置き場所が決まっていて、指示する見取り図など存在したのでしょうか。
しなの7号
郵便車では、オユ12では車掌室側と反対側を使い分けていたのですね。使用されることがない車掌室など邪魔で、積載スペースを増やしたほうがよいと思われたことでしょう。
荷物車では満載状態だと、乗務員室に一旦通しの荷物を押し込んで、荷物室内に空きスペースを作ってから仕訳作業をしました。列車によってホーム側が違っていたりすることと、車掌室の向きは本文中に記載のとおり決まっていませんでしたから、中間駅ごとの仕訳場所は、その都度異なりましたが、基本形を図に書いて覚えて、列車ごとに応用していったものです。積載見取り図は特定の列車に対してマニュアルに記載されていましたので、いずれアップします。
元二乗
見取り図のアップを楽しみにしております。荷物車でも車掌室の位置は一定していなかったようですね。空きスペースの作り方は郵便車でも苦労しました。オユ12の構造はご存じの通りで、年末繁忙期など各駅が定数を超えないよう積んできても車内に置き場所がなくなり、真ん中の休憩室にも郵袋を押し込み搭載区画が空いたら元に戻したり、車掌室にも郵袋を積み上げました。定数というのは、各駅で積むことができる最大郵袋数ですが、車内容積の限界とは無関係なのでツケは乗務員に押し寄せます。さて、荷物車への積載個数ですが、繁忙期など駅にある荷物をあるだけ積むと車内がパンクしますね。駅や車両、列車ごとに何個を越えてはならないというような、最大積載個数の取り決めはあったのでしょうか。
しなの7号
荷物では、駅での最大積載個数の取り決めは聞いたことがありません。満載になると電報で停車駅各駅に事前に知らせるので、駅は他車両か他列車での積載することになります。ただ、一時的に満載でも積んでは卸しを繰り返すので、旅客列車同様、あんなに混んでたのに終点近くにはガラ空きと言うことも多く、そのような電報手配は滅多にありませんでした。
元二乗
小荷物は駅で積み込み数を制限しなくても荷物車の両数の多さと輸送力でまかなえたといったところでしょうか。もし郵便車の最大積み込み個数を決めていなかったらどこかの駅で積み込み不能になっていたかと思われます。いろいろ小荷物と郵便の違いを知ることができました。また何か疑問があれば尋ねさせていただきます。
しなの7号
荷物車は両数が多いのは確かですが、各車は微妙に積載範囲が違ったりします。荷物量が多いと駅との間で積む積まないで揉める場面もありましたが、やはり全盛期は過ぎていた時期でしたので年末以外は郵便車に比べれば積載量に余力がある場合が多かったように思います。
郵便車の実態をご教示いただきありがとうございました。