列車掛は乗務する列車に乗るときは、まず始発駅の指定場所で「貨車解結通知書」を機関士の分と合わせて2枚受け取ります。これによって列車の全容を把握するのです。これには列車の重量、長さ、途中駅の切り離しや連結予定両数が書かれています。
これが貨車解結通知書です。写真のものはもっとも簡単な内容の例で、途中駅での連結開放がないものです。
緩急車に乗りこみ、尾灯を点灯させます。そのあと始発検査といって列車としての整備状況の検査確認をします。緩急車から前の機関車に向かって徒歩で長々とつながった貨車の連結器の状態、ブレーキホースの連結状態、ハンドブレーキやフットブレーキの緩解状態、エア漏れ、有蓋貨車の扉の施錠状態、無蓋貨車の積み荷の積み付け状態などを異常がないか1両ずつチェックしていきます。先頭の機関車まで行き、機関士と当日の列車における時刻や着発線の変更事項などの確認照合をし、「貨車解結通知書」を1枚渡します。
写真は機関士に貨車解結通知書を渡す列車掛です。貨物列車は旅客ホームから発車するわけではないので、機関車の運転室はものすごく高い位置になります。
これで機関士も列車の状態を確認します。決められた重量(牽引定数)をオーバーすると、勾配を登ることができなくなったり、列車が遅延することになります。一方、決められた長さを超えると、行き違いや追い抜きができなくなり、ダイヤが大きく乱れる元になります。すべて列車掛が列車の組成と運転の責任を負って列車が運行されるのです。
さて、先頭からは今度は列車の反対側を検査確認しながら最後部の緩急車へ戻ります。
私が乗務していたころは携帯用の無線機があって、出発合図や入換作業、ブレーキの貫通試験、異常時の連絡などをこの無線機での交信で行っていました。機関士とだけでなく、駅との交信も、駅の近くであれば可能でした。緩急車に戻るとすぐ、その無線機の通話テストを行います。交信の相手先は機関士です。
異常がないと、引き続き無線機を使ってブレーキ試験を行います。ブレーキは機関車のブレーキ弁の操作によって、最後部の緩急車まで全車両が一斉にかかることが絶対条件です。たくさんの貨車を連結している列車のどこかでブレーキ管の締切コックの開け忘れがあれば、その車両から最後部までのブレーキは作用しないので、そのようなことがあれば列車は所定の位置で停車することができないばかりか、行き過ぎて大事故を招くこともあるのですから、必ずブレーキ管貫通状態と作動を確認するとともに、エア漏れも圧力計で確認します。故障などでエア漏れがひどい場合は、その車両の応急処置をしなければならず、場合によっては最高速度の制限を受けたり、切り離して修理しなければなりません。ブレーキ試験は機関士と列車掛の共同作業です。これで異常がないと発車です。

この記事へのコメント
アルヌー
列車掛の方の発車前の確認事項や一連の作業が、どの様になされているのか良くわかりました。
本当に責任重大だったんですねー。
緩解って、手ブレーキを緩めるっていうか、車で言うところのパーキングブレーキを解除するって事ですよね?
緩解って言葉の響きが、かっこいいです。
(^o^)/
しなの7号
ここでの緩解状態の確認は、おっしゃるとおり、1両ごと単独のブレーキ(基礎ブレーキ装置といいます)が緩められているかの確認のことです。「緩解」の反対は「緊締」(きんてい)と言います。
アルヌー様のコメントで気が付きましたが、貨車の場合は基礎ブレーキ装置が手ブレーキだけでなく、足によるフットブレーキもありますので、あとで本文の訂正をさせていただきます。申し訳ありませんでした。
hmd
詳しい発車前手順が解説されていて、よくわかりました^^
結構やることが多いのですね。正直、大変そうに感じました。
現場の乗務員でないとなかなか撮影できない貴重な写真や伝票などを大切に保管されていてびっくりです^^
しなの7号
機関士に解結通知書を渡している写真は、同僚が旅客専門の車掌区への転勤が決まったときに、列車掛の仕事の様子を記念撮影してほしいと言われ撮ったものです。
コメントありがとうございました。