「専務車掌(乗客扱)」の続きになります。この「専務車掌(乗客扱)」に関する直前の記事は「【125】 専務車掌(乗客扱)1:車掌から専務車掌へ」です。
専務車掌になって専務車掌(乗客扱)の指定を受けると客専班に配属されます。当時の職場での専務車掌(乗客扱)・車掌長(乗客扱)の乗務範囲は次のとおりでした。
東海道本線:宮原(操)~大阪~静岡
東海道本線支線:大垣~美濃赤坂
武豊線:大府~武豊
中央本線・篠ノ井線・信越本線:名古屋~長野~新潟
関西本線:名古屋~奈良
紀勢本線:亀山~津~紀伊勝浦
伊勢線:南四日市~津
北陸本線:米原~東富山
高山本線:岐阜~富山
普通車掌の乗務範囲に特急急行列車の乗務が加わったために、専務車掌の乗務範囲は中部地方の主要幹線ほぼすべてに及びました。ただし私が所属した最下位組である客専班G組は、通常そのすべてに乗務するわけではなく、その中の一部しか乗務できませんでした。大雑把にいえば、これまで車掌として乗務した区間に長野までのしなの号の乗務区間が増えただけでした。
しかし、この職場の専務車掌になったからには、いずれ上位組への異動があるわけです。その前に、予備勤務と言って、決められたスケジュールから外れて、年次有給休暇(年休)を取って休んだ人の穴埋めの乗務をすることもありましたし、急遽乗務行路の変更を言い渡されることもあります。そのため職場の乗務範囲内はどこでも、どの列車でも乗務できなくてはなりません。
客専班になると、4日間の机上講習があり、特急券、急行券、指定席券の発売方、乗車変更や指定券変更の取扱方を始め、運転取扱上の規定を学びました。国鉄という組織のなかでも細かい運転上の取扱は管理局によって独自に規定されていることがあります。所属する名古屋鉄道管理局のほか、乗務範囲に当たる長野、新潟、金沢、静岡、大阪、天王寺の各鉄道管理局の運転取扱の規定を覚えることが必要になるのでした。
当時の講習のため資料です。該当者に配られました。武豊線などでは荷物列車がないので車掌もキハ35など普通車の一部を利用して行われた新聞輸送などの荷物輸送にも従事しましたので、荷物関係の規定類の冊子が貸与されていましたが、これは返納しました。
講習には貸与されている規定類や資料が必要でした。
車内改札の時の改札鋏も、車掌と専務車掌(客扱)とでは鋏痕が異なっていたので「ろ」から「い」の鋏に交換しました。
旅客営業関係の規定集のなかで、基礎となるのが旅客営業規則であり、それを受けて旅客営業取扱基準規定がありました。
この2つが冊子になっているのがこれです。
周遊券や企画乗車券の類をのぞく切符に関する規定はこの冊子に収録されています。大型時刻表のピンクのページに書かれていることはこの2つの規定が元になっています。たとえば切符の字模様についても規定されています。上の画像はその旅客営業規則の一部です。第186条に切符の「字模様」の印刷についての規定があります。
こちらのほうは同じ冊子の旅客営業取扱基準規定の一部です。同様にこちらの規定でも、第182条に切符の「字模様」の印刷についての規定があります。旅客営業規則第186条の規定を受けて、さらに細かく使用するべき乗車券類の種類を規定しています。
「【134】専務車掌(乗客扱)3:線路見習」に続きます。
この記事へのコメント
TOKYO WEST
さすがに名鉄局随一の規模を誇る車掌区だけあって、乗務範囲も広範囲ですね。その前は「金星」の乗務もあって、岡山、広島、門司の各鉄道管理局管内まで入っていたわけですから、現在ではとても想像がつきません。
中学の同級生のお父さんが東京車掌区で専務車掌をしていて、いろいろな話を伺ったことがあります。営業面では他局独自の特別企画乗車券があったり、運転面では取扱いの細かな違い(たとえば、出発指示合図器の音も東京南局はベル、静岡局はブザー)もあって覚えることも多く、特に名古屋局以西に入ると神経を使うとのことでした。
私も旅客営業制度に興味があって、名古屋鉄道管理局旅客営業等取扱基準規程や大阪鉄道管理局旅客営業取扱基準規程も持っていますが、局ごとにローカルルールがあって東京三局との違いに驚いたものです。
そういえば、名鉄局の車掌さんは車補に駅名を記入するとき、「美濃●●」を「みの●●」と書くことが一般的だったのでしょうか。
もーたろう♪
前の記事からもう1度じっくり読ませていただきましたが、細かいですね~ これを覚えるとなるとそれだけで頭がパンクしそうです(汗
こりゃ相当勉強しなければ!!!
切符の模様も懐かしいですね。
私の記憶では、特に動輪の模様に「こくてつこくてつ」って書かれてたのが何とも懐かしいです。
しなの7号
コメントありがとうございます。
本文中にありますように、私は事実上長野鉄道管理局の乗務が加わっただけでしたが、長野局では駅の出発指示合図がアナログベルを2回鳴らす方式だったのが、ブザー長音に慣れた自分にとっては、新鮮というか遠くまで来た気がしたものです。
「美濃」の件は、たしか名古屋鉄道管理局旅客営業等取扱基準規程だったかに明文化してあり、「旧国名」はひらがな表記できることになっていました。「尾張」「三河」もひらがなOKでした。「美濃」は画数が多いのでひらがなで書く車掌が多く、かつ無人駅も多いので古い車内補充券で目にする機会が多いのではないでしょうか。
それにしても、さすがに当時のことをよくご存知で脱帽です。旅客営業制度も難しいもので、当時は乗務範囲が広がることで、経路特定、選択乗車など勉強したことがありますが、私など現役引退後すっかり忘れてしまってお恥ずかしい限りです(^_^;)
しなの7号
おはようございます。コメントありがとうございます。
規定類、とても全部は覚えきれませんよ^^;
先輩たちの経験談がいちばん勉強になるもので、とりわけ失敗談が重要でしたね。
何でもそうですが、こんなことまで規定されているのかと思うところまで、きちんと書かれているもので、こうした切符も、種類ごとに字模様や色が細かに決められているのですね。意外と在職中はこういうことに無頓着だったりしますが(^_^;)
hmd
寒い日が続きますね
なるほどですね~4日間も講習ですか (^_^)
これは覚えることが多いなぁ、と正直思いました。昔は長距離運行が多かったので、尚更、大変だったかと・・・そう言う点では、現在のJR東海は路線規模が小さい方なので、今は幾分楽なのでしょうか?(失礼ながら ) 車掌さんは機械だけでなく、接客や発券もあるので、そういう意味では運転士よりも大変ですね (^_^)
しなの7号
ほんとに寒い日が続きますが、「犬は喜び庭駆け回り」ではなく「鉄は喜び沿線駆け回り」で、雪景色を撮り鉄したりしています(^O^)/
いきなり知らない駅からの切符を出されて「乗り越し」なんて言われると焦ったりしますね。「鉄」だからよほどいいんですが(^_^;)
ああ、○○線にそんな駅あったようなとか考えながら「あとでまいりますので、少々お待ちを」と言っておいて、車掌室で時刻表の地図を見て、ああ、ここか!
そんな感じですね(^_^;)
アルヌー
コメント遅れて申し訳ありません。
今日から復帰いたしました。\(^o^)/
四日間の講習で覚えるには膨大な量の資料ですねー!?もちろん全てが初めて見る訳では無いと思いますが、車掌さんが大変な業務なんだと改めて思い知らされました。
以前の字模様の時に詳しい説明を頂いたのは、この資料からだったんですね。
それから、“ろ”や“い” の刻印にそんな違いがあったなんて初めて知りました!!
僕が持っているマルス券にも押してあるやつがあります。
p.s.今日からブログを再開したいと思いますので、これからも宜しくお願いしますm(__)m
しなの7号
おひさしぶりです。いらっしゃいませ(^o^)丿
字模様の根拠はここです。切符の色のことも、いろいろ規定されていますので、収集した乗車券類を見ながら読むとなるほどと納得することもいくつもありますが、この手の、第何条のなんたらかんたらを読んでいると眠くなる類のものでもありますね(^_^;)
貨車区一貧乏
今では過去のしがらみを考えず、ようやく国鉄~JR乗務員時代を振り返ることが出来るようになりました。
ブログを拝見しますと共有する部分が多々あるなぁ~と懐かしんでおります。
これからも楽しく拝見しますので今後ともよろしくお願いします^^
しなの7号
インパクトがあるハンドルネーム、以前にもコメントいただいたことがありますので憶えております^^;
民営化前後は「去るも地獄、残るも地獄」と言われていましたね。組合関係=力関係=人間関係 多くのしがらみが付きまとう職場の暗さは忘れることはできません。私も退職後はJRなんか乗るものかとさえ思うことがあったのですが、好きなものは好きで、退職後約1年でJR(元国鉄線)乗りつぶし旅を始めた自分が居ります^^;
今後ともよろしくお願いいたします。