「専務車掌(乗客扱)」の続きになります。この「専務車掌(乗客扱)」に関する直前の記事は「【134】専務車掌(乗客扱)3:線路見習」です。
客専班G組になり線路見習が終わると、次の写真のように決められた乗務割表の順に乗務をすることになり、それのくり返しでした。
正式名称は「乗務割表」のようですが、現場では「交番表」と呼んでいました。
乗務割表の一マスは1日。上から下へ7マス。これで一週間。それが横へ4マス。最後の日だけ1マスが2つに区切ってあり、全部で4週28日+1日=29日のスケジュールを繰り返すわけです。
かっこ内の時刻は出勤時刻で、その下が列車の発車時刻・到着時刻の順になります。乗務割表には、その行路の最初に乗る列車と最後に乗る列車が書いてあるだけです。その間には何本もの列車に乗務することになりますが、その内容はこの「乗務割表」には記載できない場合が多いので、別に「行路表」という表があって、その内容が記されていました。
たとえば乗務割表で最初の77行路は16時09分に車掌区に出勤し16時54分に乗務開始。名古屋~亀山間を3往復して翌日12時51分に到着して仕事が終わるのですが、「乗務割表」では最初と最後に乗務する列車しか記載されません。その「行路表」を見れば次の写真のように、その内容がわかります。
その77行路から始まり11日めに63行路があります。
乗り出し列車が「しなの7号」で、長野まで乗務。
「しなの18号」で折り返しそのまま回送で神領泊り。
翌日しなの5号になる回送に乗務して終わるという特急行路で、客専班G組ではこのほかには特急の乗務はなく、通常は快速や普通列車で車掌時代と同じ線路を行き来していました。
ただ車掌班との2人乗務になれば、運転業務は後輩車掌が担当しますので、専務車掌は車内に入り、案内業務、車内精算をします。車内の仕事が終われば後の運転室に戻り、ドアの開閉など車掌業務すべてをやっていました。
77行路の259Mの途中(四日市まで)と231Mの全区間に一点鎖線が引いてありますが、この区間が車掌との2人乗務の意味です。専務車掌どうしの乗務もありますから、その場合は最下位組の私がドア扱いなど運転業務をしますので、仕事の内容としては、なんら普通車掌とは変わらないのでした。
このように通常は普通車掌とは変わり映えのしない仕事でしたが、時には普通車掌にはない楽しみがありました。ふだんは乗務できない臨時列車にも乗務する機会があるのです。過去のブログ記事「【7】臨時列車」にその概要を記しましたのでよろしければご覧ください。
臨時列車のなかでも急行や特急は乗客扱いがあるので専務車掌が乗るのは当然なのですが、それ以外の臨時の普通列車のほか、試運転や回送、添乗員のいる団体列車は運転業務だけすればよいので、普通車掌でも運用上は問題なく、必ずしも専務車掌が乗務する必要はないのです。それでも、私の所属している車掌区では客専班の専務車掌が乗務することになっていました。オールマイティに使える専務車掌に要員を持っていたほうが運用上有利ということだったのでしょうか。
臨時列車に乗務する機会が与えられるのは、たとえば泊り勤務のうち1日年休を取った場合の残りの1日とか、乗務割表で決められたスケジュールを離れて予備勤務に指定されたときでした。
予備勤務では
年休を取った人の行路の穴埋めでの乗務、
事故などの異常時に乗務員が手配できない場合の乗務、
特別改札要員としての乗務、
臨時列車や季節列車などの交番上に組み入れられていない列車の乗務
をするのです。
予備勤務は私の所属する職場では月単位で指名されました。また予備勤務を希望することもできました。ただ駆け出し専務の分際で予備勤務を希望して、ほとんど知らない北陸本線や信越本線の勤務を急遽言い渡されてもすぐに対応する自信がありません。特急や急行の乗務はチームワークが大切なので、ほかのメンバーに迷惑をかけてしまうことにもなります。線路見習はしているので事前に言い渡されれば、先輩に要注意点を確認しておくとか対応はできるでしょうが、予備勤務の性格上、急に勤務を命じられることもあるのですから、自信がないと不安なものでした。
車掌区によっては、予備勤務の日を乗務割表の最後の部分にあらかじめ何日か組み込んでおいて、誰でもほぼ毎月予備勤務をするという車掌区も多くありました。
このあと(来週)は実際に予備勤務で乗務した個々の臨時列車を振り返ってみますのでお楽しみに(^o^)丿




この記事へのコメント
アルヌー
先日は常総線の情報を頂き、ありがとうございました!
こちらは物凄い雪が降ってます。積雪間違い無しって感じで、一面真っ白になってます。
専務車掌さんの業務体系を大変興味深く拝見致しました。
一番上の写真は携帯で見ると数字が判別出来ない部分もあるのですが、1ヶ月の勤務スケジュールがこの様に組まれている事は初めて知りました。
出勤時間の指定まであったんですねー!?
行路表を見ると、泊まり勤務や回送列車への乗務など、拘束時間が長かったり日付を跨いだ勤務だったりと大変なお仕事だと改めて感じる事ができました。
交番表にない臨時列車への乗務は、やはり新鮮な気持ちになれるものなのでしょうか?
予定外の列車への乗務だと大変な事の方が多いですか?
本当に勉強になりました。続きも楽しみにしています!(^o^)/
しなの7号
いつもコメントありがとうございます。
一番上の写真は見にくくて申し訳なかったです。
ご覧のように乗務員は毎日出勤時間が違うことと、基本的に翌日しか仕事が終わらないのが特徴です。
鉄道が好きで乗務していると、時に変わった列車に乗れることがあって、それは楽しいのですが、車両の冷暖房の加減とか取扱が違うほか、普段と違う作業があったりしますので緊張はしますね。
貨車区一貧乏
車掌の仕事と交番表は切っても切れないものでしたね。
次のダイヤ改正まで勤務がわかりますので、休みたいその日が泊まり勤務だったら年休を二日間申請しなきゃならないので、すぐに年休がなくなってしまった記憶が…
現在の仕事が基本的に土日が休みなので、年休はほとんど使うことがなく貯まる一方です
余談ですが 元同僚(現役車掌)の自宅前で道路工事をしていました。彼が、遅い日勤~早い日勤~通常日勤~泊まり・明けと仕事をしていたら、その通勤を見ていたらしい道路工事会社の方に「あんた、若いのにプラプラして仕事ないのか?よかったらウチで働かないか?」なんて親切に声を掛けられ、戸惑ったことがあったそうです^^乗務員、外から見れば失業者~^^(離職者をバカにしてるわけじゃないですよ)
しなの7号
コメントありがとうございます。
年休の話ですが、職場によって異なるところでしょう。
私の交番表をご覧いただくと、29日目が「計又は公又は休」となっていまして、「計画年休」「調整公休」「休暇」のいずれかが充てられました。
交番上に、あらかじめ計画的に付与された年休のうち、一定日数を入れて年休消化促進をするわけです。そうでもしないと年休は消化しきれない様相でした。計画年休を消化してしまうと「自由年休」を任意で29日目(交番のケツと言いました)入れてもらい、年休残が少ないと予備勤務で日勤行路に乗ることになるわけです。
不規則勤務に対する一般の方からの誤解はたしかにありましたね。おもしろい話をありがとうございました。
年休の話、不規則勤務の話とも、いずれは本文でも取りあげてみたいと思っています^^;
hmd
なるほどですね (^_^) 行程表は運転士さんや車掌さんを見ていると運転台などに差してあるので、遠目で見えますので知っていましたが、別表(個人の交番表)や予備勤務もあるのですね
列車ダイヤの流れとチームワークが必要なので、勤務は大変かと思いました。それも、早朝・深夜・泊まり有りですよね
続編も期待しています (^_^)
しなの7号
いつもコメントありがとうございます。
このころは、まだ楽だったと思います。ダイヤ改正のたびに密度が濃くなっていきました。
予備になると、深夜の臨時列車の乗務も多くなりました。