今から27年前の1986年(昭和61年)4月29日から5月5日まで、名古屋で蒸気機関車が運転されました。
愛知の鉄道100年を記念して、C56160号機を当時の大阪鉄道管理局梅小路機関区から借り入れての運行でした。今年「あおなみ線」で実験走行したのと同じ機関車だったわけですが、客車もまた今回同様12系客車が使用されました。このころは名古屋にも12系客車が配置されていましたので、借り入れたのは機関車だけでした。
上の写真は笹島の「愛知の鉄道100年フェア」会場で撮ったものですが、画面右側の高いところにに架線柱が見えているのがおわかりでしょうか。ここは先月「SLあおなみ号」が走行した現在のあおなみ線そのもので「ささしまライブ」駅付近です。そしてC56160が停まっている場所は、「SLあおなみ号」の撮影場所として解放されていた国鉄笹島駅跡地の空地付近にあたるものと思います。
このとき運転されたSL列車は「1世紀号」と名付けられ、その運転区間は、武豊~(名古屋)~木曽川間でした。
1886年(明治19年)愛知県内で最初に開通したのが、この区間だったというわけです。
4月29日・5月3日~5日に、名古屋~武豊間に1往復
4月30日・5月1日・2日に、名古屋~木曽川間に1往復
このように名古屋を起点として、日によって運転区間が変わっていました。
例によって本番前には試運転が行われました。そのとき撮影した写真がこちらです。
大府を出て武豊線が東海道本線を乗り越えるところです。
そして本番、東海道本線の名古屋~熱田間を行く「1世紀号」です。「東海道本線の名古屋~熱田間」と言うと違和感がありますが、当時の東海道本線には尾頭橋駅も金山駅もありませんでした。この撮影場所は現在の尾頭橋~金山間にあたります。
続いて、反対方面木曽川行の尾張一宮駅発車風景です。当時、尾張一宮駅は高架化前で、地平に線路が敷かれていました。
このころ梅小路のC56160は現行の黒地ではなく赤ナンバーでした。そのとき運転と整備を担当したのは名古屋第一機関区でしたが、その前身である名古屋機関区でも、そこに所属する蒸気機関車のナンバープレートの色は赤が用いられていました。ご覧のように当日は「名一」の区名札が挿入されていました。
ちなみに、現在リニア鉄道館に保存されているC6217とC57139も名古屋機関区の所属機関車でしたので赤いナンバープレートです。
「1世紀号」運転のとき、国鉄は最末期を迎えており、名古屋地区では蒸気機関車が定期運行を退いてから、すでに十数年経過していましたが、まだ蒸気機関車の運転経験者がいたので、名古屋第一機関区所属の機関士と機関助士が乗務にあたりました。
車掌は武豊往復を名古屋車掌区が、木曽川往復を米原車掌区がそれぞれ担当し、いずれも終点駅では機関車の付け替えと転線の入換作業を行いました。
いずれの駅でも転車台がありませんでしたので、折り返し名古屋へ向かう列車は逆向きの運転でした。武豊線の尾張森岡~大府間の写真です。
マスコミ各社も「1世紀号」の運転を報道し、テレビでは新幹線0系との並走や、当時の在来線の新鋭だった117系とのすれ違いのシーンの空撮映像などが放送されました。その0系も今は引退し、JR東海の117系も定期運行から退こうとしていますが、C56160号機は、それらよりはるかに年輩車であるのにもかかわらず、時空を超えてこれからも走り続けてくれることでしょう。






この記事へのコメント
京阪快急3000
このC56 160号機ですが、自分は1991年に森ノ宮電車区において開催された、大阪環状線開業30周年のイベントの時に初めて見ましたよ。
初めてみるSLは、ものすごい迫力でした。
しなの7号
梅小路のC56160は国鉄末期~JR初期には全国あちこちのイベントで出張してましたね。小さい機関車なのですが、迫力十分で私が大好きなSLのひとつです。
ベイ
私はこの時に、名古屋第一機関区に勤務していました。
たしか、試運転の時に客車に乗車した記憶があります。
分割民営の一年前に片道切符の出向となり、そのまま転籍となりました。
とても懐かしかったので、コメントさせていただきました。
しなの7号
名古屋第一機関区の機関士さんや運転士さんとは、よく一緒に乗務しました。お互い大所帯の職場ゆえに個人的にお名前を存じている方はほとんどありませんが、所属車両ともども、国鉄乗務員時代の主たるパートナーでした。
鉄子おばさん
しなの7号
C56160は、小型軽量が幸いして、全国各地の興業に駆り出され、鉄子おばさん様はじめ多く人々の癒しに貢献してきたわけですが、かなりくたびれているのは事実のようです。D51200の本線復活後の処遇は、どのようなことになるのか気になるところですね。
東海のどら猫
しなの7号
私はありませんでしたが、職場では皆、沿線警備に動員されました。