このところ、急に寒くなりました。今週から年内の毎月曜日は国鉄時代の暖房事情についての記事にしようと思います。第一回目は国鉄電車の暖房についてです。
私が車掌だったころ、よく乗務していた電車が通勤形103系、近郊形113系・117系、急行形153系、165系特急形381系でした。これらの系列の電車はすべて、車掌が乗務する最後部運転台で編成一斉に暖房の入切の操作が可能でした。
当然のことですが、特急・急行形と新しい117系に比べて、ドアの数が多く独立した出入台がない通勤形や近郊形の暖房効率はよくありませんでした。それでも113系のうち後期車2000番台の暖房は効きましたし、神領区の103系は、国鉄末期に豊田区から転入した4両を除き暖房強化改造がされていました。また、117系と381系は、自動暖房温度調節機能があり、あらかじめ各車の配電盤でセットしてある適正温度を保てるようになっていました。それ以外の系列では、気候によって車掌が最後部の暖房元制御スイッチ(①と②の2回路あり)を手動で操作して温度管理をしていました。特に153系や165系のような暖房効率が良い急行形では、2回路とも暖房回路を入れてしまうと暑くなりすぎることがありましたし、気候によっては103系や113系といった近郊形や通勤形でもそれは同じでしたから、乗務中には2回路ある暖房元制御スイッチを片方だけにしたり、一時的に2回路とも切ったりと、こまめなスイッチ操作をする必要がありました。
暖房器は座席の下にあります。急行形の場合では2回路とも暖房を入れると全部のシート下が暖かくなるのは当然ですが、1回路ずつが、通路をはさんで左右互い違いのシート下が暖かくなる配線になっていました。113系では暖房元制御①で、ドア両脇のロングシート下が暖かくなり、暖房元制御②で4人ボックスシート下が暖かくなりました。お客さんによっては足元からの熱気を嫌う方もありますし、逆にシートが冷たいと冷えてしまうから嫌だという方もおられましょうから、暖房元制御①と②をときどき交互に入れたり切ったり繰り返すこともありましたが、そこまでの気遣いをするかどうかは、車掌の性格と経験によって大きく違ってくるわけで、そのようなことをまったく気にしない車掌もいました。混雑の状況によっても車内の温度は変わりますので、前後の空いた車両と混んだ編成中ほどの車両とでは温度差がありましたし、103系や113系では先頭車両の効きが悪いのは常でした。113系では、前にも書いたように、隙間風が多い初期車とユニット窓の2000番台では同系列とは思えないほどの温度差がありましたので、両車が混結になったときは困りました。
103系と113系では、国鉄分割民営化時点では非冷房のままで、扇風機を装備している車両も多くありました。特に103系には冷房車にも扇風機が残してありました。(JR化後の113系冷房改造車も同様でした。)
扇風機と暖房は同時に使用しない前提でしたので、暖房元制御回路は扇風機元制御回路と共用になっていて、一斉に入切する元制御スイッチは共用でした。毎年春と秋に暖房・扇風機とも使用禁止の期間があって、その期間中に順次電車区で回路の切り替えをしていたのだろうと思われます。その使用禁止期間内に極端に暑い日や寒い日があった場合に、うっかり暖房(扇風機)元制御スイッチを入れてしまうと、扇風機が回り出す車両と暖房が入ってしまう車両が混在する結果になるわけで、実際にそんなことが起こりました。
冬期には始発駅での暖房予熱が実施されました。予熱作業は、車掌が乗務する前の出区時に運転士が暖房元制御スイッチを入れるだけのことでしたが、寒冷地では客貨車区や庫内運転士によって、その列車の運転士が出場するまえに暖房元制御スイッチを投入することになっていたので、寒冷地でも暖かい状態で始発駅から乗務できました。
この記事へのコメント
黄色い車掌
当方も出庫や側線で起動の際は本当に車内が寒く、暖房を入れたとしても全く(´~`)なんで、運転士と共に凍えながら仕事してます(((^^;)
ピット庫内や地下側線から出庫ときは車内は暖かいので、その時はあぁ幸せ(*´∀`)と思って乗務してます。
この話題から逸れますが、2011年に165系のクモハ(クハ)がたくさん連結されてる郡山行きの回送列車の乗務記事がありましたが、先日ネットを見ていたらこの回送列車の写真を掲載してるサイトにたどり着きました。運番、撮影日が同じなので間違いない無いと思います。もし、ご存知でしたらすみません。
http://jigyourin.web.fc2.com/toukaidou8-6.html
なはっ子
寒さがきびしくなってきましたが、経費節減を兼ねて、今年も最小限の暖房で乗り切ろう、と決意したところであります(笑)。
やくも3号
しなの7号
寒い朝、まだ暗いうちからの仕事は辛いですね。暖まる前に発車、走行中にまた冷えるといった感じでしょうか。ご苦労様です。
クハ165の改造に伴う回送編成についてのご教示ありがとうございました。私は存じませんでしたがまさにその列車でしょう。私が乗った名古屋~浜松間は深夜でしたが、根府川まで来ると撮影可能時間帯になったわけですね。
しなの7号
私の場合、乗務中の113系0番台の早朝~午前中にわたる長時間連続乗務行路ができたとき、「ももひき」着用をはじめました。乗務員宿泊所で同室の人に、「そんなの穿いとるのか、年寄やなあ!」とバカにされましたが、穿くと快適♪でしたので、以後やめられなくなりました。
着込めば暖房節約ですね。
しなの7号
実際にお客さんに温度を聞くこともありましたが、個人差もあるので難しいところで、車内巡回時には必ず車端部の温度計には目を向けていました。
自分は高校生の頃にキハ58急行に乗って、座席の上に立って押込型ベンチレータを勝手に開閉したことがありましたが、煤か錆かわからないものが、バラバラと降ってきて目に入った経験があります。
門ハイ
列車暖房、何とか蒸気暖房までの記憶はあります。国鉄時代は、電車でも気動車でも、この辺りから暖気が来ているんだ、とわかりましたが、最新型は どこからともなく均一に暖めてくれるのが不思議です。
鉄子おばさん
NAO
中学を卒業してすぐ、四国を車中4泊でひとり乗り鉄したのですが、当時あったDC中村夜行のグリーン車に始発の高松から乗ったところ、そばに居た男性客が、「寒いやないか、なんで先に暖房を効かしておかへんのや」と車内を通り過ぎたカレチさんに詰め寄っていました。
「なあ」と言って私に相槌を打ってこられたのですが、私はそれほど困ってはいなかったので、腕組みして少しだけ首を曲げたようなポーズで、(どちらとも言えない、寒いといえば寒いような、けれども車掌さんの見方ですよ)みたいな無難と思われる立場を表現するのに苦労しました。
しなの7号
いまどきの鉄道車両の暖房事情はさっぱりわかりませんが、総じて快適ですね。暖房の性能とかも向上しているのでしょうが、それによって、ヤケドしたとか、鉄道会社も別の悩みの種ができて大変なのかもしれません。
しなの7号
人それぞれに快適温度が違うのに加え、厚着や薄着をしている人が混在した空間の空調は、機械任せだけではできないこともあって大変難しいです。
ホームの運転士氏、缶の温かさ以上の鉄子おばさん様のお気持ちが伝わり、寒さも吹っ飛んで快適に運転できたのではないでしょうか。
しなの7号
おっしゃるとおり、声の大きい者の意見が反映されるのが社会の常識。相手との交渉に、いきなり同意を求めてくる輩。身に覚えがありますから、その時の状況は絵に描いたように想像できます。今回は電車に限定した記事になりましたが、気動車の暖房についての暖房事情を次週アップする予定にしています。
ヒデヨシ
旧型のものなんかだとうっかり足がメッシュに触れて熱かったことがあります。
どういう構造か判りませんがたしかキハ58なんか窓側の下に線路方向にカバーがあったような?
格好の足置き代わりになるので好きでした。
南駒ケ岳
しなの7号
おっしゃるとおり窓側の下に線路方向にカバーがあったのは、キハ58系でした。気動車の暖房については来週アップする予定ですが、電車でも床下に冷房装置がある381系は窓側の下にダクトのカバーがあります。座面が低く、車体裾が絞られて足元が狭い381系の場合は、足置き代わりどころか邪魔くさいものでしかありませんでした。
しなの7号
165系時代でも、真冬の木曽路では窓ガラス内側に付いた水滴が凍ってしまうほどでしたし、窓によっては巻き上げた雪が隙間風とともに入ってきていました。そういうところを313系に乗っていますと、その暖房能力は強力だなと思いますね。ワンマン区間で後寄り車両に乗ると、無人駅でのドアの開閉がありませんのでその効果もさらに抜群です。
新車で通勤になりましたか。私はまだキハ25に乗る機会がありませんが、313系同様の快適さが引き継がれているのでしょうね。
木田 英夫
最近のコメントの目次から旧型客車の暖房の記事に入り、「いつも乗っている電車はどうなのだろう」と思い、記事を順にたぐってこちらに入りました。
座席の下のヒーターを半分ずつ入れる、あるいは全部入れるという方法で温度調節をする件、今回も新しい発見でした。本文には書かれていないようですが、通勤形の103系でも同じように半分ずつon、offだったのでしょうか。半分onの時に、暑がりのお客様が座った席がonで、寒がりのお客様が座った席がoffだったとしたら、ちょっとした悲劇ですね。
冬の寒い時期に、暖かい電車に乗るとやはり「ホッ」とします。昨今では例の関係で長時間停車中のドアの手動扱いが取り止めになってしまい、通過待ちの間に車内が冷え切ってしまうのは、感染症拡大防止のため止むを得ないのでしょうが少し残念です。
いつもありがとうございます。木田英夫
しなの7号
103系の暖房回路のことはもう記憶が怪しくなりました。ところでオリジナルの103系は、全部の座席下にヒーターが設備されていたわけではないようなので、暖房全開でも常に冷たい座席があったはずです。
本文中に書いたように、寒冷地での使用を前提にした神領区の103系(すべて古い低窓車)は、首都圏からの転属に伴って暖房強化改造されました。改めて神領転入時の資料を確認しましたら、暖房強化改造後は、ほぼ全部の座席蹴込板裏に先頭車1両につき14個ヒーターを配置した図が描かれていますが、改造前には座席下にヒーターを先頭車1両につき8個分散配置しているに過ぎず、図にはヒーターが1個もない7人掛けシートさえあるように描かれています。神領区には低窓車しか配属されていませんでしたから、後期車やJR各社に分散したあとのことは状況が異なり、仕様変更や改造があって暖房事情は良くなっていたのだろうと思います。
常識は時とともに変わっていくものですし、社会情勢に合わせた一時的な取り扱い変更、さらには鉄道会社ごとの取扱いの違いも見受けられ、コロナ禍以降公共交通機関を利用する機会がほとんどなくなった私には、ついて行けないことばかりです。