14m級の車体であったモ560形が、10mレールを走ってくるときのジョイント音のリズムは独特でした。
2軸ボギー車ですから、「タタンタタン・タタンタタン」となりそうなものですが、そうはならず「タタタン・タタタン」というリズムで走っていました。3軸ボギー車のようなリズムは北恵那の音として私の耳には染みついてしまっています。
こちらは、乗車したときの車内音です。そのリズムがわかります。
※動画はありません。画像は拙ブログで過去にアップした画像の使い回しで、再生時間は1分です。
20秒過ぎと50秒過ぎに警笛の音が入ります。50秒過ぎの警笛が鳴った直後のチャッチャッチャという音は、電車の横揺れで、吊り輪が大きく揺れて左右の網棚にぶつかって発した音です。
2軸車のくせに3軸ボギー車のようなリズムを発するわけは、この車両の竣工図面を見ると理解できます。
台車中心間距離が7925mmで、個々の台車軸距は1900mmとなっています。この車軸配置だと、4軸あるうちの最前の車輪と最後の車輪との間は9825mmになり、レールの長さ10mと近似値といえます。このことから、ほとんど同時に前後の車輪が別々のレールの継ぎ目を通過するため、音が重なって3軸車のようなリズムを刻む結果となるわけです。
北恵那鉄道が廃止になったのは1978年9月でした。そのころの私は国鉄に就職して荷物列車に乗務掛(荷扱)の職名で乗務していました。自家用車を持つようになっていましたから、鉄道廃止後の様子を確認することを兼ねて、ドライブに出ることもありました。そうして記録したモ560形の廃止後の画像をご覧いただきましょう。
561…廃止後に下付知駅まで自力回送後、現地で解体
562・564…廃止後に山之田川駅まで自力回送後、現地で解体
563…中津町車庫で解体。なおモーターは名鉄に譲渡とのこと。
565…廃止翌日に山之田川駅まで自力回送後、愛知県海部郡弥富町(現弥富市)にあった「動物レストラン エルザ」に保存展示の目的で売却され、その日のうちに山之田川駅から陸送。
563以外は、廃止後に中津町から自力回送で主要駅へ分散疎開されたような形になっていますが、そのときの感触では他の車両は解体前提ではなく、バス待合室としての再利用計画を含む保存予定があったようです。しかし、廃止時点で処遇がはっきりしていたのは売却が決まっていた565と後日紹介するデキ251の2両だけで、563は中津町車庫で、561・562・564の3両は、回送された先の駅で、いずれも本線のレールが撤去された後もそのまま側線上に置かれたままでしばらく留置された後、そのまま解体の憂き目にあっています。
廃止翌日に行われた565の搬出作業には私も立ち会っていますので、(来年にずれ込む可能性が高いですが)、改めて、その日のことをご紹介することにします。
この記事へのコメント
NAO
冒頭は桜がきれいな画像ですね。
ジョイント通過音は線路の長さで変わるものなのですね。迂闊でした。
待合室としての車体利用が実現していても、風雨にさらされて老朽化してゆくままであったとすれば、それはそれで切なくなるかもしれません。
しなの7号
今回もYontubeは音がメインでしたので、使った画像はすべてブログにアップした画像の使い回しです。
JR幹線系のロングレール化でジョイント音は楽しみにくくなりましたが、ジョイント音が楽しめる中小民鉄の乗り鉄ではこれが楽しみの一つですね。
北恵那で待合室化されたのは、他形式で一例だけでしたが、短命で再転用されました。
急行おが1号
廃線になったり廃車になった車両や線路を、そのままの姿で保存して欲しいと思う気持ちは、どの「鉄」にも共通のおもいでしょうが、保存するにもたただ置いておくだけでも他人の土地ならば地代を払わねばならず、また雨ざらしでは、朽ち果ててしまいますので、それなりのメンテナンスと費用がかかりますね・・・
今回の記事で拝見した写真をみていたら、現役時代は、地域の方がの足として、どんな日でも黙々と走り続けていたのだろうと思うと、何だか車両たちが可哀そうでした。
最近のJRの車両は、昔に比べるとずいぶんと寿命が短くなりましたね。経営や合理性を考えると、昔のような頑丈な車両を長く使うというより、10年くらいで廃車にして、車両の更新をするほうが有利なのだと思いますが、私のような昔の考えの者は、ちょっと違和感を覚えたりします。
北恵那デ2
しなの7号
鉄道車両の保存とは、難しいものですね。保存車のことはまたいずれ書きますが、北恵那鉄道の事例でよくわかりました。
痛々しい画像ばかりアップしましたが、現実を最後まで記録しておきたかったのでファインダーを向けました。
鉄道車両に限らないことですが、
修理しようにもパーツの保管期限が…
修理するより買ったほうが安い…
造るほうも、あらかじめ決められた年数に耐えるだけの品質にしてコストダウンするなど、考え方がかわってきましたね。たしかに10年間で進化したなと思うことは、すごくたくさんあります。
しなの7号
2両編成の音は録っていないのですが、そうとうに複雑になりそうですね。
モ560形よりさらに短い車長の名鉄モ510の3連が揖斐線の鉄橋を通過する動画を撮ってあるのですが、それはにぎやかな音です。一連の北恵那に関する記事が完結したらアップしましょうかね。
私が持っている北恵那鉄道の形見は、廃線跡に落ちていた架線を吊る金具や碍子くらいですね。ブログにもよく書くことですが、鉄道部品や記念グッズの類はもともとそれほどありませんでしたがかなり処分しました。結局のところ、こういうことになるようでは、車両本体を個人で所有し管理することなど、簡単にできるものではないなと思いました。
北恵那デ2
しなの7号
名鉄モ510の音はお持ちでしたか。あれは1両でもタッタタタ
ンタッタタタンと小刻みな音ですね。うちの録画にもアナログな踏切警報音が入っています。同じような場所(下方?)のようですね。
本来の役目を終えた車両なり部品なりを保存するのであれば、そのことによって第二の活躍の場として幸せだと思えるような環境にしてあげないとかわいそうですね。
急行 陸中
しなの7号
そして、この電車たちに感謝します。