列車の中での忘れ物は多いわけですが、宮脇俊三さんは、生前、国鉄時代の東京駅を取材され「東京駅 素顔の24時間」(著書 終着駅は始発駅に収録)という短編を書いておられます。その中から引用させていただくと、東京駅へ取材に行った折の「お忘れ物承り所」で、「なかに入ると、無いものは無いといってよいほど何でもある。人間とはこんなに何でも忘れることができるのかと感心してしまう。」という感想をお持ちになったようです。
私たちも、テレビ番組で、どうしてこんなものが?と思うような忘れ物が紹介されるのを知って驚いたりもします。私も車掌在職中に変な忘れ物に出会ったことがあります。
(以下の画像はJR東海になってから撮影したもので、当日の撮影ではありません。)
国鉄時代のある日、乗務していた東海道本線下りで、大垣から支線に直通する美濃赤坂行。
終点美濃赤坂に着くと無人になった最前部車両の進行左側の荷棚に縦横各30㎝、高さ15㎝くらいの無地の段ボール箱が1個載っているのを見つけました。
途中駅で降りた乗客の忘れ物のようでした。先々月に「【787】美濃赤坂線」の最後のほうで書いたように、終点の美濃赤坂駅は、旅客営業上は無人駅でした。列車はすぐ折り返して大垣行になりますから、忘れ物も折り返して大垣駅に引き継ぐことになります。
その箱は持つととても軽く、何も入っていないようにも感じましたが、粘着テープでしっかりと封がされ、側面にはキリか千枚通しが開けたと思われる小さい穴がたくさん開けられていました。
その様子から生き物が入っているようでしたので、左右に箱を揺さぶってみましたが、物音や中で動くような気配も感じませんし、鳴き声も羽音も足音もしませんでした。臭いもありません。
そのまま乗務員室で保管して、折返し列車で大垣駅に着くと、いつものように車内点検のため駅員が待機していました。ドアを開け、
「はい、遺失物。行きの美濃赤坂行で、先頭車、海側、まんなかへんの網棚。」
と言って、その駅員に箱を見せると、
「ああ、あったか。よかったよかった。」
どうやら、忘れ物に気が付いた乗客が、すでに駅に申告していたようで、一件落着、無事に持ち主に届くようです。
駅員、私に向かって
「何が入っとると思う?」
「何か動物でしょう?」
「そうだよ。」
そしてニヤニヤしながら、
「ヘビだと! お客さんがそう言っとったわ」
そりゃあ、鳴き声も足音もしないわなあと納得しつつも、びっくりでした。
ところで、車内に持ち込んでよい手回り品については、大きさや重量をはじめ、有料無料の区分を旅客営業規則で定められていました。
【国鉄の旅客営業規則 第307条】
「 旅客は、第308条又は第309条に規定するところにより、その携帯する物品を手回り品として車船内に持ち込むことができる。ただし、次の各号の1に該当する物品は、車内に持ち込むことができない。
(1)別表第4号に掲げるもの(以下「危険品」という。)及び他の旅客に危害をかけるおそれがあるもの
(2)暖炉及びこん炉(乗車船中に使用するおそれがないと認められるもの及び懐炉を除く。)
(3)死体
(4) 動物(小数量の小鳥・小虫類・初生ひな及び魚介類で容器に入れたもの又は第309条第2項の規定により持込みの承諾を受けた動物を除く。)
(5)不潔又は臭気のため、他の旅客に迷惑をかけるおそれがあるもの
(6)車両又は船舶を破損するおそれがあるもの
【国鉄の旅客営業規則 第309条第2項】
「旅客は、小犬・猫・はと又はこれらに類する小動物(猛獣及びへびの類を除く。)であって、次の各号に該当するものは、前項の規定【省略】に準じて国鉄の承諾を受け、普通手回り品料金を支払って車船内に持ち込むことができる。【以下省略】」
とありますので、ヘビはたとえ普通手回り品料金を支払ったとしても車船内に持ち込むことができない物品と言えます。
大垣駅の駅員は持ち主に対してどのような対応をしたのかは知りませんが、たぶん「これから、ヘビなんか持ち込んじゃいかんよ」と終わりだったような気がします。
昨年は東海道新幹線で車内でヘビが発見されて、乗客が避難したうえで、臨時停車して捕獲された騒ぎがあったようですし、不審な荷物などには神経質になっている鉄道各社のことですから、今だとそう簡単には事が進まないでしょう。
▼2023年3月30日追記
この記事のアフィリエイト広告は、悪評につき幾度となく差し替えしましたが、すべてが国鉄のように悪評でした?ので、削除しました💥
この記事へのコメント
やくも3号
蛇の下のアフィリエイト広告がうなぎwww
食べてる最中に蛇を思い出しそうじゃないですかwww
しなの7号
食用のヘビのアフィリエイト広告が見つかりませんでしたので、土用丑も近いことですしウナギにしましたが、どうもお気に召さないようなので、爬虫類ということで食用「ワニ肉」のアフィリエイト広告を追加で貼っておきますので、よろしければどうぞ。低脂肪で高たんぱく、低カロリーと3拍子そろっているヘルシーなお肉だそうですよ♪
abesan11
山歩きの時に携帯こん炉を持ち込んでいたので,罪悪感を抱いていましたが,上の記述を読んで安心しました。
しなの7号
昭和の時代、実家にネズミは普通にいましたし、列車内は定期的に消毒はしてましたが、ネズミのクレームを頂戴したことはありました。
こん炉は山屋さんは持ち歩くのですね。規定だけ読んで、誰がこん炉なんか持ち込むのだろうと思いました(*'▽') 何事もそうですが、実体験を伴わない知識など役に立ちませんね。
NAO
忘れ物としては重い事案、まさしくヘビー級ですね(失礼致しました)。隣国の大国へ出張に行ったとき、蛇料理を数回、接待で出されたのですが、頂戴する立場では食べないわけにゆかず、見るのもニガテな生き物でしたか、少しは慣れました。
同僚が屋外での飲み会の景気付けとして、たくさんの花火を電車で持ってきたことがありましたが、あれは火薬なので危険物になるのではと...。
持ち込み禁止の掲示は車内でしか見たことがありません。細かい規則を知らずに持って乗った人からすれば、後出しジャンケンのように取られるのでしょうか。
hmd
門鉄局
変な忘れ物は時々ありますが、へびは勘弁して欲しいです。
見るだけでもダメなのにましてや食するなんて私には無理です。ヘビー級などと冗談で流せるNAO様、尊敬に値します。
「鉄道の乗務員なんて何にも役得無いな、人生で1度くらい接待されたいな」なんて思っていましたが、へびで接待なら遠慮したいです。でも相手方の気持ち、自分の立場を考えると断れないのが一般企業の常識なのだと思うと私自身の甘さを感じてしまいます。
昭和50年代初期の0系新幹線にはゴキブリがいて、時々車内にお出まししていました。どこに巣があるのか、まさか床下?世界一速い列車のはずなのにと不思議でした。
うなぎは好物ですがワニとか無理です。怖いので(意外と気が弱いので)早急に広告を削除して頂けると幸いです。
私の書き込みがしばらくなくなったら、広告が怖くて見れなくなったということでご理解願います。(笑)
しなの7号
私が蛇など食べたことがないのはもちろんですが、ウナギですよといって出されれば、食に知識もなく味覚音痴な私は、うまいと言って食べると思います。
近年、ディスカウントスーパー巡りをしている我が家で、非常に安い魚の切り身を発見。「サメ」と書いてあり、家内は買うのを躊躇していましたが、煮て食べたら白身の魚でおいしかったです。イメージに固執してはいけないと思ったものです。
旅客営業規則をひも解きますと、別表第4号に掲げる危険品であっても、手回り品として「車内」に持ち込める物品が指定されていて、がん具煙火、競技用紙雷管及びその他のがん具用軽火工品であれば、鉄道区間であれば1㎏以内ならOKのようです。ただし自動車線内での数量はさらに厳しくなっていて、船に関してはまったくアウトみたいに読み取れます。
しなの7号
くだらない思い出話へのお付き合いありがとうございます。
何の目的があって、蛇をわざわざ箱に入れて持っていくのでしょうね?
ペットとして飼っている?
マムシ酒を造る?
Gさんもときどき車内にお出ましになり、その都度車掌区に報告して車掌区経由で車両基地に消毒駆除依頼を出してもらいました。乗務員は苦情を言われ頭を下げるしかないのですが、そのような車両を運用するのは国鉄当局の責任です。もちろん労組からも消毒周期の見直しや方法の改善についての職場要求を出していますが、そういうことは、マスコミにたたかれないと改善されないのは、いつの世も同じです。当局と癒着している労組では労組としての意味を持ちません。(ああ、またいらないことを言ってしまいました。すみません<(_ _)>)
今のように動画でアップ拡散されたら鉄道会社のイメージは…と思うと怖いことです。ドアが少なく保温効果があり、車内飲食が頻繁に行われエサが豊富な特急急行車両がGさんはお好みのようでした。
しなの7号
都会育ちの方々は、蛇に対する嫌悪感?って強いのですね。田舎育ちの私は、実家の玄関や庭はもちろん座敷でも大きなアオダイショウを見かけることはあったし、道路の横断(これで2回ひき逃げしたことあり…)したり、川を泳いで対岸に渡っているのを見たこともありました。田舎では家のネズミを食べてくれるアオダイショウは益獣だから家にいたほうがいいのだし、いじめたらいかんと聞かされました。ですから食べるなんてもってのほかとは思ってましたが、別に崇め祀ったりするほどではありませんでした。
脱皮した蛇の抜け殻は大切に持ってきて、空き家になった後も実家でも床の間の上の梁に永く飾ってありましたし、両親は抜け殻を折りたたんで財布にいれていました。お金が貯まるのだそうです。(その効果は信用していないので私は入れてません。)
ワニの広告は誰にも頼まれたわけでもないので、あとで取り下げ、代わりにNゲージの「ワム」と「マニ」の広告に差し替えておきますね。 ワニは私も怖いですが、トカゲは捕まえて遊ぶことはあります。でも、かわいいので決して食べません。
0系以外にもGが鉄道車両を住処にしていましたというのは、上のhmd様への返信コメントで読んでください。車内飲食がしにくくなって辛いということがありましたが、エサがなくなるばかりか隠れるところもなくなってしまうロングシ-ト化も鉄道会社に言わせれば的確なG対策になっていますね。
以上、今後とも懲りずに拙ブログをよろしくお願いいたします<(_ _)>
つだ・なおき
ヘビの忘れ物、迷惑なことで・・
ゴッキーの話もよく聞きますね。
職場の先輩、国鉄の某工場へ食堂車の改造工事で出張しました。
件の食堂車(特に形式は秘す)の内装や床をバラすと・・
エラい事になってたそうです(笑)。
群れをなして走り回ってたとか・・わああああっ!
しなの7号
「Gは1匹見たら100匹いると思え」と言われていますが、改造工事で隠れ場所が一気に破壊されれば、その現実を目の当たりにすることになりますね。「見ぬもの清し」という言葉がありますが、外食など実態を見たら食べられないものだらけでしょう。人と共生しているようなものですからどんなところにも現れますが、2~3年ほど前に、家の網戸に外からGがバタバタ飛んできてくっつきました。地を這うイメージですが空襲でした。それにしても、Gさんはその存在だけでみんなから嫌われて、まるで国鉄職員みたいで、ある意味差別扱いで同情します(*´ω`)
はやたま速玉早玉
ヘビの忘れ物ですか(笑)ペットとして飼われていたのでしょうか?琉球地方では『ウミヘビ料理』があるらしいですが、これを肴に泡盛で一杯やるのもオツなものかもしれません。
コンロはワンゲル部員にとっては必要不可欠です。保存している高校時代の『1988年夏山合宿計画書』を久しぶりに見ました。北アルプスへの4泊5日の合宿で、装備品分担表のページには『男子コンロ各自1個、ガス各自4個』『女子コンロ各自1個、ガス各自1個』と。さらには『早玉:テント、テントマット、包丁』と記されており、今思えば『包丁って…これって銃刀法違反?』です。往路、しなの号に京都→松本間乗車しましたが、包丁の車内持ち込みは、アウト、ですよね…
はやたま速玉早玉
ウミヘビの事はイラブーと呼ぶらしく『イラブー汁』として提供されるのが主みたいです。沖縄の郷土料理で宮殿にも提供された高貴な食材、滋養強壮にも良いとの事です。私は沖縄行った事はありませんが、その際にはチャレンジしたいですね(*^▽^)/★*☆♪
しなの7号
私は食い物に関してはまったく無頓着で「高級」と言われるものを高いと思うことはいつもですが、うまいと思ったことはあまり記憶にないですから、ウミヘビ…私はチャレンジしなくてもいいです(*_*;
日頃食ってるものが一番うまいです。沖縄産なら「もずく」と泡盛は好きです。自分的には観光客用の料理とか食材より、地元民が普通に食べているものを食べてみたい。そのため旅先のスーパー巡りは好きです。1人旅に限っては、100%ビジホでスーパーで買った惣菜や弁当と地酒カップの夕食で、郷土料理を含めて外食はしません。2人以上の場合はその限りではないというか行動パターンは逆転します。
部活ではしっかり持たされて相当頑健だったのですね。 列車の場合は手荷物検査など事実上不可能でしょうし、明らかに調理用の包丁はセーフなのでは? 航空機の場合は毎回のように引っ掛かる私です。
鉄子おばさん
しなの7号
子供のころに家で子ネズミがチョロチョロ出てきて、隠れていたところを母がつついて、出てきたところを私が母の買い物籠をかぶせて生け捕りにしたことがありました、そのあとの処分に困りました。
やくも3号
ああああああ、上のウナギ屋さんは大変なことになってしまいましたね。ニュースに出ていました。
しなの7号
ご指摘ありがとうございました。まったく存じませんでした( ゚Д゚)
この広告は削除します<(_ _)>
ちなみに先ほど今年初めてウナギを食べました。もちろん中国産です(*´ω`)
やくも3号
こちらのページのアフィリエイトを踏んでから楽天に入って、先ほどうなぎを購入しました。楽しみー。
毎日腹筋90回しているのに体重減らないので、食べ過ぎ防止のために上のへびの写真を思い出しながらいただくことにします 笑
しなの7号
いつもありがとうございます♪
ウソ偽りのないところならいいのですが…
関西では「まむし」っていうじゃないですか。他所の者には、「まむし」と言って出されるウナギは、どうしても蝮を想像してしまいます。
当初のウナギの広告についてご指摘していただいてから、ウナギの広告はどこを信用していいのかわからなくなったのと、ワニも不評でしたので、ウナギ同様に栄養価の高い蜂の子の広告に差し替えました( ^ω^ )。実家のほうでは昔からアウトドアの趣味として多くの方が「ヘボ(クロスズメバチの幼虫)捕り」をやっています。ヘボ飯とかもうまいですよ。そもそも私が子供のころに住んでいたところは山国なので、イナゴとか蚕のサナギとかも食用でしたが、山一つ隔てた隣の伊那地方にはザザムシ(カワゲラ、カゲロウの幼虫)や馬肉などの郷土食が今もあり「伊那の悪食(あくじき)」と呼ばれます。いらないことばかりで申し訳ありませんでした。うまいマムシ丼お召し上がりください。