【930】 天生峠越えと白川郷

紅葉の時期でもあるので、飛騨方面に家内と2人でドライブに行くことにして、直前に飛騨市内の宿を予約しました。往復で走行ルートを変えて、なるべくたくさんの道の駅を訪れ、野菜を買い回ることも目的の一つなので、高速道路は使いません。
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道路地図を見て思いついたルートは、往路をJR高山本線と並行する国道41号線で北上し、帰路は国道360号線~国道156号線(白川村~郡上市経由)という一周ルートでした。このうち国道360号線の飛騨市~白川村の間にある天生峠(あもうとうげ)が、例年積雪がある11月頃から6月頃までは通行止めになるので一年のうち約半分の期間は通行できません。ネット検索してみると今年は雪害箇所が数か所あり、復旧工事をするために昨年から通行止めが継続され、9月25日に開通したばかりであることがわかりました。まもなく積雪があることを考えれば、今年の通行可能期間はわずか2カ月程度というわけで、天生峠越をするにはよい機会になりました。


以前、ブログで20代の頃に峠越えにハマっていたということを書きましたが、当時も天生峠にチャレンジしたいとかねがね思っていました。しかし今より道路事情がよくありませんでしたから、当時同じ岐阜県内に住んでいたにもかかわらず日帰りが難しい位置関係にありました。それでも一度だけ郡上経由で白川村に一泊して、翌日に天生峠越えをするつもりで出かけたことがありましたが、その日のうちに急遽帰らなくてはならない事情ができて、峠の麓にある白川村荻町に着いたあと、そのまま引き返したので、峠には行けずじまいになってしまいました。あれから35年ほど経ってみると、そのころとは山岳道路事情がずいぶん変わっています。たとえば国道158号線安房峠は年間を通じて通行できるトンネルが開通しましたし、東海北陸自動車道などもできました。ところが国道360号線天生峠に関しては、今でも国道のくせに大型車通行不能のままで道路事情はそれほど変わっていないようで、未舗装路が舗装された程度の変化しかないように思えました。
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今回は飛騨市側から白川村に向けて国道360号線を走りました。天生峠を越えた印象は、いちおうは国道を名乗るだけあって、普通車ならどうにか行き違えるような道幅が確保され、舗装もしっかりしていて、非力な軽自動車なりに楽しめる道程でした。かつてあちこちの未舗装の林道で、轍にハマったり路上にごろごろある石に接触したりしないよう注意を払い、ガツンと床下で接触音がすれば、車を停めて床下をのぞき込みオイルパンが割れていないか肝を冷やしたことを思えば、安心して運転できる路面でした。しかし切り立った崖と覆いかぶさる樹木の影響からなのか、あまりに急なカーブが連続するからなのか、トンネルがあるわけでもないのにカーナビに「衛星捕捉中」の画面が幾度も現われ、通信が途切れました。
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大型車が通行不能なのは、半径が非常に小さいつづら折りがあるからでしょう。対向する大型車がいないのは気分的に楽です。対向の二輪車には注意が必要ですが、雨上がりであることと濡れた落ち葉が路面に積もっているので、それほど速度は出せないはずです。峠前後にある最終集落間ですれ違った対向車は数台程度で、そのうち二輪車は1台だけでした。急坂道路の片隅に停車して色づいた山々を眺めていると、乗り鉄旅で言えば末端のローカル線で、がら空きの列車に乗ったときの満足感と同じでした。


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頂上付近の紅葉は終わっていました。しかし白川村に降りていくと道端にはこのような滝と紅葉が見られました。
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下った先が合掌集落、白川村荻町です。

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ここまで来るとそれまでの静かな山岳ドライブとは大違いで、観光客で混雑していました。その多くは外国人で、昨今は観光地に行くとどこでも似たような状態に出くわします。
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合掌集落は見たいけれどこういう状況は嫌いです。これは乗り鉄旅に例えるならば、黒部峡谷鉄道のようなものでしょうか。黒部峡谷鉄道が敷かれた目的には大変興味がありますし、その車窓は大いに見たいけれども、混雑した列車の乗客にはなりたくないのと似ていて、私はいつでも二の足を踏んでしまい黒部峡谷鉄道には一度も乗ったことがありません。

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白川村荻町集落もただの観光施設なら、わざわざ立ち寄ったりしませんが、大家族制があったころの家屋がその場所に残っていることが奇跡的だと思っているので、ここまで来たのであれば混雑していても立ち寄ることにしました。


前述のとおり、ここに来るのは約35年ぶりで、そのときのことを思い出します。私は父と2人で郡上八幡の鍾乳洞を見てから国道156号線で夕方ここへ着きました。母は家で留守番をしていました。来る途中に公衆電話で予約した合掌民家の民宿に夕刻には落ち着き、家にいる母にこの日の宿に着いたことを近くにあった公衆電話で知らせたところ、母が「隣のご主人が亡くなったはら、帰ってきてほしい」と言うので、その民宿では囲炉裏を囲んで夕飯を食べただけで宿泊はキャンセルして即刻家に帰りました。家までいちばん近いと思われる初めて走る夜道を高山経由で家に帰ったのは深夜でした。

なぜ、隣人のご主人が亡くなったから帰らねばならないのか、都会住まいの方には想像できないかもしれませんが、田舎ではその地区の住人がみんなで故人を見送るものでした。地区の組長が葬儀委員長を務め、亡くなった方の家の両隣各4軒ずつが通夜や葬式のお手伝いに出るなど、きちんと規約が設けられており、隣人が亡くなったとなれば、翌日は夫婦そろってお手伝いに行くのは当然のことでした。母が1人お手伝いに出ればよいではないかと思われるかもしれませんが、そのころ数はへっていたものの土葬の場合だと、墓地の穴掘り役を仰せつかることもあって、そうすれば男手が必要でした。そのほか書き出すときりがありませんが、今住んでいるところでは考えられない地域ぐるみのお付き合いとしきたりがあるものなのです。

かつては「僻地」だった白川村のようなところでは、そうやって何事も地域ぐるみで協力して生活をしていたのでしょう。しかし高速道路が通じて、これだけの人々が訪れるようになったなかで、私の子供のころにあった古くからのそういった習慣や生活様式が、ある程度は都会化したのだろうかと、多少なりとも気になるものです。世代が変わり移住者も受け入れているようですから、今の生活実態に合わせていけば、近隣との関係は少しずつ変わっていくものだろうと思います。私の実家があったところでも、私の転職によって転居してからの30年で少しずつ変わりつつあるようです。


帰路の国道では御母衣ダム湖畔の荘川桜があるところで休憩しました。
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湖底に沈んだ集落から移植された大樹はすでに葉を落として来年の開花まで休眠中でした。荻町にはあれだけの人があふれていたのに、ここには誰もおらず静かでした。このダム湖底にあった村でも、地域のつながりは強かったにちがいありません。しかしここではダム建設という村の存亡の危機が訪れたことによって、村人は賛否両派に分断されたといいますから、国鉄の分割民営化のときと似たものを感じます。失われた荘川村の形見である桜と、そのダムの下流で世界遺産となって一大観光スポットとなっている荻町の集落とが対照的に思えてきます。湖底には多くの人々が暮らし、喜怒哀楽があったことは、桜の木が知っています。
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御母衣ダムと荘川桜がある国道156号線の交通量は多くはなく、それは別ルートで建設された東海北陸自動車道があるからなのでしょう。これもまた、鉄道で言うなら新幹線と在来線の関係に似ていて、新幹線は時間の短縮をしてくれて便利になったわけですが、それと引き換えに旅をただの移動にしてしまい味気ないものにしてしまいますし、ルートから外れた街は寂れていきます。


2日間の走行距離 394.9キロメートル

使用ガソリン   13.63リットル

燃費       28.97 ㎞/l

現在のドライブカウンタ点数 62点

 ↑点数については「【924】自動車保険を更新」で書いています。最終的に50点台ならキャッシュバックはなくなりますので、きわどいところまで下落中。目標の80点台には程遠い状況です



今回の旅では宿泊費の一部に、アフィリエイト広告によるポイントを利用させていただきました。ご利用いただいた皆様にお礼申し上げます





この記事へのコメント

  • 南駒ケ岳

    しなの7号さんお久しぶりです。
    私も天生峠にはよく通いました。しなの7号さんの4枚目の写真の奥に続く道の先にある「天生湿原」と更に先の「籾糠山」では雪解けの6月はミズバショウ、キヌガサソウや香り豊かなサンカヨウなどの花々が咲き誇り高層湿原と原生林の素晴らしい景色が見られます。今期も通行止めの期間が長かったのですね。過去には下調べもせずに行ったため河合村のゲートに車を置いてこの道を2時間かけて峠まで歩いたこともありました。
    白川郷や高山は、中部空港から北陸に抜ける「昇竜道」(中運局)のルート上でインバウンドの人たちが大変多いですね。「ワイドビューひだ」もしかり。この波の中にいると自分が異国にいるような錯覚を起こしてしまいます。
    2018年11月09日 19:26
  • しなの7号

    南駒ケ岳様 こんばんは。
    ご無沙汰してしまい申し訳ございません。お元気そうで何よりです。
    天生峠は、岐阜県をほぼ縦断しなければならないので時間もかかり、通行できない期間が多く、ほんとうに行きづらいところですね。昔はラジオの交通情報だけが頼りでした。それにしてもさすがは山屋さんだけあって、根性ありますね。昨日は小牧市役所から小牧山に登っただけで筋肉痛です。情けない。
    10月中の土日中心に高山発着の天生湿原または籾糠山トレッキングバスツアーが催行されているようでしたが、装備も体力もない私には無理ですので、帰路に通ったひるがの高原で来年は水芭蕉を見たいなと思っています。。。

    最近、ICカードを使って多治見~美濃太田~岐阜経由で名古屋に出ることがよくあるのですが、行き違う「ワイドビューひだ」の乗客は外国人の方々が多いですね。今まで列車に乗るばかりだったのと、混雑するところを避けた結果が「昇竜道」のエリア内でも案外行ったことがない観光地がいくつもあります。今後、軽自動車を駆って、年に2回くらいはそういうところに出かけようと思っています。もちろんシーズンオフ好天の平日、混雑を避けて…の話です(*^▽^*)
    2018年11月09日 20:47
  • やくも3号

    しなの7号様 こんばんは。
    今日、嵐山に行きました。といっても、法務局が嵯峨嵐山駅の近くにあるので、仕事で行っただけなのですが、おそらく半分以上の観光客が近隣国からの外国人の方だろうと見受けられました。会社の印鑑証明を取りに行くだけなのに、大混雑の渡月橋を渡っていくことに大いに疲労しました。
    自分は田舎があまり得意ではなく、そこそこの都会が性に合っていると思っていますので人混みは苦ではないはずなのですが、ビジネス街とは異なり人の流れ(移動速度)がまちまちである観光地は、京都にいながらも仕事中は避けて通りたい場所ではあります。

    国道・・300番台以降は酷道と言われていましたが、最近は舗装がしっかりされていますね。
    2018年11月09日 22:06
  • しなの7号

    やくも3号様 こんにちは。
    たしかに移動する者にとって、人の流れが遅い観光地での渋滞は自分のペースで移動できずストレスになりますね。混んだスーパーの売り場も同じ。逆に無味乾燥なビジネス街の速足で通勤する無表情な人の群れは、私のような田舎者には立ち止まることも許されずついていくのがやっとだったりします(*_*;
    そういう私も田舎暮らしが得意ではありません。それが理想であればUターンも選択できたのに、今の住まいに暮らし続けるのは、そのへんの関係がほどほどだからです。犬のフンが道端にゴロゴロあるところは人が住みやすいところなのかもしれないです。

    峠の国道の舗装工事など、現場に行くだけでかなり時間を食ってしまうでしょうから、効率が悪くて大変だろうと思います。それで交通量が少なく恩恵を受ける人は少ないわけですが、地元民にはなくてはならない道路。ローカル鉄道もまた同じですね。
    2018年11月10日 17:01
  • おんたけ号

    しなの7号様
    こんにちは。
    小生は白川村から天生峠越えしました。富山県県境の山へ登山の為に。
    国道360号から471号の峠越えしましたが、これまた酷い酷道で・・・
    登山の為に色々な林道、県道、国道通りますが、最近トンネル開通した冠山も
    酷い酷道で、無くなったらしいですが、小生が行った時は「落ちたら死ぬぞ」
    看板がありましたから・・・

    御母衣ダム周辺道路も交通量スカスカで・・・まあ地元の方以外は東海北陸
    道利用でしょうから。

    以上、失礼しました。
    2025年10月26日 14:49
  • しなの7号

    おんたけ号様 こんばんは。
    国道471号に挑戦する度胸はありませんでした。冠山峠は林道ガイドや地図とにらめっこして、行きたいと思っていた時期もありましたが、結局実現せず。今はもう酷道はいいので新トンネルを利用してみたいとは思ってます。
    家庭を持ったことが林道走りをやめた理由でもありました。「落ちたら死ぬぞ」と言われるようなことしていてはいかんですからね。そのあとに落ちる可能性が極めて低い乗り鉄旅に移行したという経過をたどってます。
    2025年10月26日 20:48

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