ノリホとは列車乗車人員報告書のことです。
国鉄時代は大きな駅のホームの柱に、このような「のりほ」「ノリホ入れ」などと書かれたポスト状の挿入口がある小さな箱や、吸い殻入れと間違えそうな空き缶が括り付けてある光景をよく目にしました。最近はあまり鉄道で出かけませんので今でもあるのかどうか知りませんが、下の画像は2014年にJR東日本の某駅ホームで見かけたものです。
近付いてみましょう。
子供のころから「ノリホ」ってなんだろうと思っていた私は、糊に関係があるものかと思っていましたが、ぜんぜん違いました。「乗り報」だったんですね。
乗車人員が、普通車自由席・普通車指定席・グリーン車指定席の順に書かれています。この駅で列車ごとに集約しているのでしょう。乗務中に車掌は乗客数をカウントして、ノリホ用紙に記入して指定された駅で卸します。複数乗務の列車では客扱担務の車掌が記入します。優等列車では車掌長が取りまとめて記入しますので、専務車掌は自分が担当する車両の乗客数を集計して、ノリホ取り卸し指定駅到着前までに車掌長に報告します。列車乗車人員報告を求められる区間は、全区間ではなく、あらかじめ決められていました。また報告する方法も、ノリホ用紙によって駅に報告する区間と、車掌区へ帰区後に備付用紙に車掌が直接記入する区間とがありました。報告する数値は該当区間の最高乗車人員です。
ノリホ用紙によって駅に報告する場合、ホームに出場している駅員がいれば直接渡しますが、列車の停車位置に駅員がいるとは限りませんので、列車の最後部や車掌長が乗務する号車に近いホームの柱などにノリホ入れが設置されるわけですが、列車の最後部にはホーム上屋がないことも多々ありましたから、駅によってはホーム上を走ることもありました。
下は国鉄時代のノリホ用紙です。
このほか、普通列車を増発した60.3ダイヤ改正の1か月前から、ダイヤ改正の効果を検証するために、それまで調査対象でなかった区間でも乗車人員調査をするようになり、乗務区間のほぼ全区間で乗車人員の調査をすることになりました。その追加区間のノリホ用紙は様式が異なっていました。
いずれも、決められた区間内の最高乗車人員を記入します。
このように、1人乗務の普通列車や複数乗務でも通勤時間帯の列車では、最後部に乗務する車掌が編成全体の人数を把握することなど物理的に不可能なわけで、100人単位、50人単位で、かなり不正確な数値でしか報告できませんでした。しかもカウントのしかたが十人十色で、長編成ほど相当の誤差があったと思われます。
誰もが、こんな数字を信用しなかったと思われますので、誤差について言われることはありませんでした。
もちろん集計した数字は、営業や統計の基礎資料として、活用されるのでしょう。以上は毎日行われるのですが、これとは別に、年に何回か期間を定めて実施される鉄道旅客全線交通量調査というのもあって、また別の様式で列車ごとに決められた区間ごとの最高乗車人員を車掌区へ報告しましたが、いかにも役所的だったなあと思います。
こういう調査は手間とカネをかければ結構きちんと調査できるもので、国鉄退職後に愛知環状鉄道で通勤しているときに、各駅でバイトを多数動員して交通量調査をしているところに何度か出会いました。しかし終点高蔵寺ではバイト君が近くにおらず、そのまま乗り換えてしまったために、渡された調査票がそのまま手元に残ってしまったことがありました。
捨てるのも何なので(って何なんだ?)今も手許にあります。ゴメンナサイ。
この記事へのコメント
ヒデヨシ
ノリホの言葉も聞いたし箱も見たことがあります
古代の遺物のようですね
使い方は全く知らずこのような感じだったんですね。
紛らわしいと言われた柱にくくりつけられた灰皿とかありましたありました。
当時はキハ35にもあったり
なにがなんでも吸いましょうみたいな感じでした。
そう言えば鉄道気象告知板
ホーロー円盤で強風とか予め書いてあるものも有りましたが私が扱っていた物はその都度チョークで電報略号のとおりテケイとか書いていました
こんなもの乗務員が見るのかなと思ったり
事実天候が回復しても取り込み忘れたり
チョークが流れ意味不明だったり
しなの7号
ノリホの取扱い、なんかアナログで昭和っぽくていいですね。他の仕事で忙しくて、うっかり駅のノリホ入れに入れ忘れることもないわけではなくて、終着駅に着いてから、取り卸し駅に電話で報告することも経験しています。実際、そんな空き缶を再利用したノリホ入れなど、いたずらで記入した用紙を抜かれたり、強風で飛ばされたり、吸い殻を入れられることだってあったのではないでしょうか。
「ノリホ入れ」同様、駅に掲出される鉄道気象告知板も子どものころから、その存在を知っていました。鉄道気象告知板に限らず乗車券にしても、大人が崩して書く字は子供には読みにくく、どうして大人は学校の先生のように丁寧に書かないのだろうと思ったものです。乗務しているとき列車監視中に鉄道気象告知板は目には入りますが、事前に車掌区とか乗継詰所でテレビ・ラジオで気象情報はわかりますから、気にしたことはありませんでした。短距離乗務ならそんなものでしょう。車掌区にも乗務員にわかるよう掲示してありました。
今はもう電略の意味はテケンしか覚えていないです(;^ω^)
TOKYO WEST
最近では乗務員にタブレット端末を貸与している会社もありますが、ノリホを端末から報告できるようになっているところもあるそうです。
鉄道気象告知板は助役や運転主任の指示で付け外ししたこともありましたが、強風や暴風雨といったときには吹き飛ばされて危険ではないかと思っておりました。
しなの7号
今はそういう小道具を使う時代なのですね。もっともIC乗車券から膨大かつ詳細な情報が正確に得られる今は、ノリホ自体がどの程度役に立つかなあと思ったりもします。
列車のヘッドマークの取付方法はいろいろあったみたいですが、振動にも風にも耐えますから、鉄道気象告知板も、ぶら下げるんではなく、暴風雨時に備えて材質も取付方法もヘッドマーク仕様にするといい。「暴風雨特急テケニ」
「大雪」という急行もあったことだし誤って列車に掲出しないようにせねば…
3RT生
記事を拝見して、ノリホうちにもあったはず・・とずっと探していたのですが、やっと出てきました。昭和48年3月「屋久島2号」で、姫路車掌区の車掌さんからいただいたものです。もちろん乗車人員の報告を受けたわけではありません(汗)。その経緯?は、拙ブログのネタに早速使わせていただいております。
そういえば、乗車中に車掌さんがカチカチと数取り機での音を立てながら、早足で巡回しているのをよく見かけました。伯備線の通勤時間帯の客車では、大体何人くらいかなぁとノリホを書いておられたのを思い出しました。
今時の電車は、「荷重」を元に乗車人員をモニタに表示するのもありますね・・
しなの7号
貴ブログ該当記事、さきほど拝見しました。
ノリホ用紙は手ごろな大きさなので、裏面をメモ紙代わりにすることはよくあり、乗継列車の時刻を乗客に書いて差し上げたりということにも使ったことがありました。ここにアップしたノリホ画像の裏面には、編成車両形式番号と定員を計算したメモが残っています。乗継となる車掌への旅客列車引継書を作成するにあたって車両点検中にメモしたものと思われます。
車内巡回中に停車駅が迫っていたりすると速足になりますが、ノリホを主目的に車内に入るときも速足になります。声かけられると、その車両、また最初から数えなおしということも。
へえ、今は車両自体が秤なのですね。昭和の鉄道員にはついて行けないことばかりです。
おき2号
数日前、夏休みを利用して札幌へ旅行に行ったのですが、札幌駅に「のりほ」と書かれた家にある郵便受けのようなものがありました。中には紙が入っているようでどうも現役のようでした。ここではまだ現役なのですね。
PS旅行中に特急ニセコ号に乗りました。函館駅で乗車券を買った時に「山線……小樽を通ります函館線経由です」と言われたのがなんだか印象的でした。山線という言葉は現場でも結構使われているのですね。
しなの7号
ノリホ入れ、山腺という言葉、まだ健在でしたか。デジタル化の進展とともに国鉄の遺物がなくなりつつあるなか、自分には、地味ながらも、かつては幹線でも普通だった通票に思いがけず出会ったときと同じような懐かしさを感じます。
ところで、「運転士がタブレットを持ち歩く」という言葉を聞けば、昭和の時代なら通票タブレットのことになるわけですし、今の人なら運転士業務支援用のタブレット端末を想像するでしょうから、鉄道に関わるシステムだけでなく、言葉そのものも変わるだけの年月が通り過ぎたことを実感するこの頃です。
余談で失礼いたしました。
おんたけ号
こんにちは。
「ノリホ」、貴ブログで初めて知った事のひとつです。
まあ、携わっていないのに知っている人は稀かとは思いますが・・・
過去に旅先で、視界の中にあったかも知れませんが、存在を知らないから
気付く事はありませんでした。又、本記事を読んでから気に留めて、と
思っていても次の行動や目的地の事に気を取られ、忘れてばかりです。
但し先日、偶然ですが見つけました。(18きっぷ利用)
和歌山線乗り潰し兼、高野口駅と御所駅の古い駅舎訪問時の往路、米原駅
3番線の跨線橋にありました。
黄色の箱に黒文字で「のりほ」と記載されており、結構きれいなので最近
更新された現役ではと・・・
認証コード、本当ですか?
小生、暑がり、汗っかきなので連日の猛暑でどえらい事になってますね。
(金、土曜日の1泊で御嶽山に、大汗かきながら涼みに行ってきました。
本文より脱線すいません)
以上、失礼しました。
しなの7号
これまで書いてきたことは、知っていても得にならない情報ばかりだと思いますが、旅先で発見されたモノが何の目的で設置されているのか判っていただけたのなら、それはそれで旅の味付けになってよかったです。紙のノリホのようなアナログ的なモノは、まだ現役なんですね。国鉄時代に米原駅は名古屋鉄道管理局の管轄でしたが、分割民営化直前にJR西日本移管を前提に大阪鉄道管理局に移管されて、今では設備や表示等々がすっかり近畿圏の駅らしい印象になったなあと思います。
認証コードは、気が向くと随時変えています。あまり頻繁に変えたので、どんな文字列になっているのかまったく覚えてませんでした。改めて見ますと、そうです。。。先週スチール棚のある部屋のエアコンが壊れました。20年以上使ったので買い換えることにしまして、本日取替工事が入り現在は復旧しております(^^♪