【1416】 今年もやってきた国鉄の命日

また国鉄の命日が巡ってきました。毎年、日本の鉄道が国鉄時代から少しずつ変わってきたことを意識しますが、その積み重ねが今年で35回めになりました。地元中央西線では今月12日のJRダイヤ改正で、EF64-1000に混じって全区間でEH200が、多治見貨物にEF510が運用され始めました。
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国鉄型電機EF64-1000の全般検査は、先月出場した1046号機を以て終了したとのことですから、これから徐々に稼働機が減ってゆき、消滅するのは時間の問題となりました。
また、名古屋~中津川間ではローカル列車の全列車8両化が実施されるとともに、運転区間が中津川を境に完全に分断され、新型車両315系がデビューしました。
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その結果、211系の一部が廃車となり、そのなかには国鉄からJR東海に継承された211系0番台8両が含まれます。
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このことはJR東海の所有車両が分割民営化後に製造された車両に統一され、国鉄から継承された車両が全廃となったことを意味し、私が乗務したことがある車両がJR東海から消滅したことでもありました。
2年後には名古屋~中津川間のローカル列車は新型の315系に統一されるとのことですから、国鉄はまたまた記憶の彼方に遠のいていくことになります。国鉄が民営化されて35年を経た今も、身近な中央西線は鉄道としての使命を果たし進化し続けているわけですが、日本の鉄道全体を眺めると、そうとも言い切れません。もはや鉄道としての使命を果たしていない線区がいたるところに散在しており、この先のJR線は新幹線と都市部だけに集約されてしまうのではないかと思えてしまいます。明治時代から150年続いた日本の鉄道網は、これから次々と寸断される時代に入っていくことでしょう。
ところで私は今年1月16日に、意外なことから今年が日本の鉄道150周年の節目の年にあたることに気が付いたのでした。その日の朝刊には、前日に実施された大学入学共通テスト第一日目の問題と解答が掲載されていました。
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日本史B第6問では「日本において鉄道が開通して、2022年で150年を迎える。日本における鉄道の歴史とその役割について述べた次の文章A・Bを読み、後の問い(問1~7)に答えよ。」(以下省略 問題・解答は「2022 大学共通テスト」でググれば掛かります。)とあり、それを読んで今年が鉄道150周年の年であることに気が付いたということなのです。
日本の鉄道の歴史と役割について正答を出せないようでは、元鉄道員で自称鉄ヲタとしての沽券に関わるというもの、というわけでもありませんが、早速その日本史B第6問の7つの問題「問1~7」に挑戦してみました。結果から申しますと、全問正解に至らず、問4(張作霖爆殺事件、南満州鉄道設立、西原借款を年代別に並べる問題)がお手上げ状態でした。
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(以下Wikipediaの該当ページへのリンクです。)
Ⅰ 張作霖爆殺事件(1928年
Ⅱ 南満州鉄道設立(1906年)
Ⅲ 西原借款(1917~1918年)

それ以外の問題はそれほど迷うようなことはなく、特に最後の問7は、自分がリアルタイムで経験した国鉄民営化に関する問題で、国鉄民営化は中曽根内閣が日本電信電話公社や日本専売公社とともに民営化した行政改革であることは死んでも忘れるわけはないので間違いようがありません。
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国鉄民営化に関することが「日本史の問題」として出題されていることによって、国鉄は35年という年月の彼方にある遠い昔のものであることを、今さらながら再確認することとなりました。しかし受験生の年代を考えれば、国鉄民営化が行われたのは彼らが生まれる十数年も前のことであるわけです。自分に置き換えると、生まれる十数年前といえば戦時中に遡ります。私の両親は共に名古屋市内で空襲を経験しており、その話は幾度も聞いているとは言っても、生まれる前の出来事というのは他人事であって、現実として捉えにくい遠い時代のことという感覚が私にはあります。

そこで、ふと思ったのですが、今回の大学入学共通テストを受験された年代の方々の中にも国鉄型の車両、たとえば211系0番台とかEF64などを追いかけておられる撮り鉄さんがいらっしゃることでしょう。
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彼らはきっと、「国鉄のことは知らないけれど」新形にないカッコよさとか郷愁を感じるとおっしゃるんじゃないでしょうか。
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私の中高生時代も、SLに対して「戦争中や戦後の混乱期のことは知らないけれど」DLやELにない同様の思いを感じていたわけで、感覚的に似通ったものなのかなあ…とも思います。そうであれば、今の受験生の皆さん方は、私自身がその渦中にいた国鉄民営化を、私の生まれる前の見たこともない昭和20年代以前の鉄道と同じ感覚で眺めておられても不思議ではありません。

南満州鉄道の問題に手も足も出なかった私は、ロシアのウクライナ侵攻という事実を目の前にして、当時の日本がしてきたことを改めて学習するべきでしょう。侵略戦争の歴史を繰り返さないために、私どもは正しい歴史認識を持たねばなりません。そのために生を受けるはるか前の出来事がいかにして起こり、その時代背景はどうであったのかを正しく認識する必要があります。同じように考えれば、「鉄道の再生」は(表向きは)国鉄民営化の最重要目的の一つでありましたが、JR各社はその目的達成に積極的に取り組んできたのか、そしてこれからの交通網に環境面でも有利な鉄道をいかに活用していくのかについて、私たちは検証していかなければなりません。受験された年代の鉄道ヲタクの皆さんにとっては、生まれる前の出来事である国鉄民営化についても正しく理解していただくことが大切でしょう。年表に書かれている出来事の裏側まで読まなければ真実は導き出せません。鉄ヲタであれば国鉄型車両の出生の理由や時代背景にも容易にアプローチできるでしょうから、教科書に書いてない国鉄改革の実態に目を向けていただけたらと思っています。決してフェイクニュースまがいの偏った情報(拙ブログも地域分割には賛成しかねるという偏った立場で書いてきていますが…)に流されることなく、地域分割されて全国ネットを捨てたようにも思える日本の鉄道がいかなる判断で生まれ、それは正しかったのかどうかも検証していただいて、愛する鉄道の将来について幅広い視野に立って適切なご判断をしていただきたいものです。その結果として未来の鉄道が主要な交通機関として見直されていくように私は願っています。
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この記事がウェブリブログでの最終更新記事となり、以後はブログ移転準備期間とさせていただきます。新ブログへの移転時期などは、決まった時点で随時お知らせします。また近々、全記事を対象にコメント受付を中断しますが、新ブログ稼働後は受付を復活するとともに、これまでご投稿いただいたコメントもそのまま移行する予定にしております。今後も「昭和の鉄道員ブログ」をよろしくお願い申し上げます。

この記事へのコメント

  • 木田 英夫

    しなの7号様、こんにちは。
    最近の記事の目次からこちらに入りました。

    今回は、
    「年表に書かれている出来事の裏側まで読まなければ、真実は導き出せない。」
    「幅広い視野に立って…」
    という、非常に重いテーマでした。

    思い起こせば35年前はお祭り騒ぎで「昼間地上区間で運転台の暗幕が開いた(何と言ってもこれが一番嬉しかった)。」「駅員さんの応対が良くなった。」「新車がデビューした。」等とはしゃいでおりました。しかしながら、先の小説に書かれていたように、新会社への採用をちらつかせた国労からの脱退強要(不当労働行為!)も行われていたこと。このウェブログの記事で始めて知りました。
    この件に関しては、鉄道雑誌や新聞などで殆ど報道されていなかったのか、されていたけれども気が付かなかったのか、或いは無意識のうちに目を背けていたのかわかりませんが、いかに視野が狭かったのか忠告された思いです。

    鉄道マニアである以上、一般のお客様よりも鉄道に関する様々なことに気が付くはずですから、逆に好きであるがために一般のお客様が「おかしい」と感じることを見逃すことのないように、視野を拡げていきたく思っております。

    レサ編成がご縁で約1年間ありがとうございました。移転後も引き続きよろしくお願いいたします。木田英夫
    2022年04月12日 16:03
  • しなの7号

    木田 英夫様 こんばんは。
    決して忠告しているわけではありませんが、ご理解を賜りありがとうございます。
    35年前、国鉄分割民営化について多くのマスコミが、国鉄改革の「成功」で鉄道の利便性はよくなって、職場規律は改善され、累積赤字は「適正」に処理されるといった、見かけ上の体裁ばかりを前面に押し出して、お祭り騒ぎのように報道していることに違和感を持っていた私でしたが、それはその渦中にあった者だからこそのことで、一般国民はそうではなかったでしょうし、改革の問題点を掘り下げて異議を唱えながら報道していたのは限られたマスコミの限られた番組だけだったようでした。
    鉄道趣味誌では、RJ誌の中で種村直樹氏が分割反対論をよく書いておられました。分割民営化の4年も前(1983年8月号)に、“民営論はともかく「分割」は鉄道網の崩壊につながるおそれが強く、目先の得失だけで国鉄の命運をきめると、数十年後にはほぞをかむことは必至であろう”と。その2年後(1985年10月号)には“国鉄再建監理委員会が中曽根首相に提出した最終答申を読み失望した” “この答申を読んだのち、ひときわ分割に賛成しがたくなったのである。” とあり、その翌月(同11月号)には、最終答申に対して「分割を前提にこじつけた作文」という題で2ページ半にわたって論じておられました。
    後年になって中曽根自らが国鉄分割民営化(国労の崩壊)によって総評の崩壊(=日本の労働組合の崩壊)を意識してやったと本音を白状されました。
    前にも書いたことがありますが、平成になってから言われるようになった「リストラ」は実質的に国鉄分割民営化が原点となったように私は思っていますし、それは後々過労死・過労自殺が社会問題になって働き方改革へとつながっています。そういうことを思うと、日本国民は指導者に騙されているロシア国民のようにならないようにしたいと思うわけですが、日本史の南満州鉄道の問いに歯が立たないような私がそんなことを言ってみても説得力がありませんね?
    そもそも国鉄は国民の共有財産であり「公共の福祉を増進することを目的」(旧日本国有鉄道法第1条より抜粋)として設立されていたのに、最後の最後に惨殺されるまで国民のためというより政治の道具としてさんざん利用され、その責任は取られることなく、ツケを国鉄と労働者だけでなく、すべての国民に押し付けてきたと考えると、国鉄が憐れに思えてならないのと同時に理不尽であると感じています。
    移転作業期間中はいくつかの機能がストップすることになりますが、引き続きよろしくお願いいたします。
    2022年04月13日 20:33
  • 木田 英夫

    しなの7号様、おはようございます。
    移行期間中に返信コメント、ゆっくりと読ませて頂きました。特に最後の、「そもそも国鉄は…」以下の段落は、以前に道路関係公団の一つである阪神公団に勤務していた者として、大変考えさせられる内容でした。

    鉄道は運賃を頂いてお客様を目的地まで運んでいます。一方、高速道路は料金を徴収しても決して運んではくれません。(自分で車を運転するか、高速バスに乗らなければ目的地へは行けません。)が、両者共に広い意味では同じ交通機関と言えましょう。
    昔の「我田引鉄」と似たような、「一本で何期暮らせる?道路族」といった川柳。或いは「高速道路は議員の集票マシーンになっている」ということを、公団在職中に聞いたこともあります。

    鉄道が運賃を払って乗って下さるお客様のためにあるのと同様に、高速道路も(運んではくれませんが)一般道よりも安全に、快適に、早く行けると思って、決して安くはない料金を払って利用して下さるお客様のためにあるはずなのに、国鉄と同じように政治の道具にされていることに、退職後10年以上経った今でも腹立たしさや悔しさを感じることがあります。

    朝早くから、また移転早々余り良くない内容で申し訳ありません。今後ともよろしくお願い致します。 木田英夫
    2022年05月10日 07:37
  • しなの7号

    木田 英夫様 こんばんは。
    「一本で何期暮らせる?道路族」って川柳があるんですか。国鉄の場合は運輸族になりますが、置き換えれば、まったく同じように使えそうな川柳で、なるほどなあって思いました。
    運輸族と言えば、中曽根内閣の時代になってからも当初は自民党運輸族議員も民営化はやむを得ないが分割に対しては消極的な考えで、それは国鉄幹部の思惑と同じでした。それが、ある日突然に自民党運輸族の一人であった三塚博が「国鉄を再建する方法はこれしかない」と銘打った本を出版して、分割民営路線が本格化したという経緯がありました。

    国鉄の民営化は政治介入されないためという側面があったわけですが、新たに新幹線が開業していくたびに疑問に思えてきます。高速道路もまた同じだとするのなら、それは将来、第二第三の国鉄が生まれてしまうことを意味しますから気を付けなければなりません。
    2022年05月10日 20:29

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