毎月、その月に因んだ楽曲を1曲ずつ選んで語っています。選曲にあたっては個人的な志向や趣味に偏ります。昭和の時代に発表された曲が多くなると思いますが、必ずしも昭和のヒット曲とも限りません。なお、私は音楽や詩の世界にはまったく通じていませんので、作詞者が描いた世界とは外れたことを語ることもあると思いますがご容赦願います。楽曲や作詞作曲者歌手について知らないことやデータなどはWikipediaとCD等のライナーノーツを参考にします。
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4月の歌は、松田聖子 さんが歌う「赤いスイートピー」としました。
赤いスイートピー
作詞:松本隆
作曲:呉田軽穂
編曲:松任谷正隆
春色の汽車に乗って海に連れて行ってよ
煙草の匂いのシャツにそっと寄りそうから
何故知りあった日から半年過ぎても
あなたって手も握らない
I will follow you あなたに
追いてゆきたい
I will follow you ちょっぴり
気が弱いけど
素敵な人だから
心の岸辺に咲いた赤いスイートピー
四月の雨に降られて駅のベンチで二人
他に人影もなくて不意に気まずくなる
何故あなたが時計をチラッとみるたび
泣きそうな気分になるの?
I will follow you 翼の
生えたブーツで
I will follow you あなたと
同じ青春
走ってゆきたいの
線路の脇のつぼみは赤いスイートピー
好きよ今日まで
逢った誰より
I will follow you あなたの
生き方が好き
このまま帰れない帰れない
心に春が来た日は赤いスイートピー
◆Youtube: https://www.youtube.com/watch?v=2Htj6AChzTE
「春色の汽車」と「四月の雨に降られて駅のベンチで二人」というフレーズがあることから、4月の歌としました。私は松田聖子ファンというわけではありませんでしたが、聖子さんが歌った楽曲の多くに質の高さを感じています。この楽曲が印象に残っているのも、松本隆さんの作詞によるところが大きいと思っています。松本さんは松田聖子さんだけでも138曲もの詞を提供されたらしいです。それ以前から、私がさまざまな歌手(アグネスチャン・高田みづえ・岡田奈々・南沙織・竹内まりや・太田裕美・やまがたすみこ他)の気になった楽曲が「作詞・松本隆」とされていることがたびたびあって、松本隆とは、どこのどういう方なのだろうと思っていたのでした。「赤いスイートピー」が世に出た前後に知った大瀧詠一さんのアルバム「A LONG VACATION」(1曲を除いて松本隆作詞)で、松本さんが元「はっぴいえんど」のメンバーであったことを初めて知ったのでした。
「赤いスイートピー」の作曲者は呉田軽穂(=松任谷由実)さんということもあって、ハイレベルな一曲になっていて、今になっても色褪せない昭和歌謡の代表曲と言ってよいと思っています。どうでもいいことですが、編曲者はユーミンの夫である松任谷正隆さんでしたから、歌手・作詞者・作曲者・編曲者がすべてお名前が「松」の字から始まっているのも不思議なことです。
歌詞は「春色の汽車」から始まります。この汽車のイメージとはどんな汽車なのでしょうか。個人的には「汽車」なら蒸機かと単純に思いました。
しかし「春色」ですから黒い蒸機より明るい電車のほうがいいかなと思ったりもしました。
その点についてはWikipediaに
《冒頭の歌詞、"春色の汽車"について、松本は「"春色"は子どもの頃に記憶しているオレンジと緑色の湘南電車で、それが海に続いているイメージ」であると明かし、更に「江ノ電の鎌倉高校前から鎌倉駅の商店街を抜けて海が急に見えてくる景色が大好きだった」》
とありますから、春色とは国鉄の湘南色だったと思われます。
松本さんの手による楽曲に登場する男は、強くてカッコいい男ばかりではありません。NHK‐FMで放送された番組(2019年放送「今日は一日"松本隆ソング"三昧」)で、松本さんは、近藤真彦さんに提供した「スニーカーぶる~す」の主人公について、「“俺についてこい”みたいな前向きな男ばっかじゃないだろう」と話しておられましたし、KinKi Kidsに提供した「硝子の少年」では「10代の男子はけっこうもろい。もろいけど男だから強くあらねばならないというのも同時にあるしね。わりと少年の歌好きでよく書く。」と言っておられました。
「赤いスイートピー」に出てくる男子は「半年過ぎても手も握らないちょっぴり気が弱い」ナイーブな男子です。 その彼を「好きよ今日まで逢った誰より I will follow you あなたの生き方が好き」と女子に言わしめています。そういうシチュエーションは、「男は(又は女は)こうあらねばならぬ」という昭和の時代の歌謡曲には、それほどなかったような気がします。今やっと認められつつある「多様性」を、すでにあのころに歌詞に表現されていた楽曲とも言えるのではないでしょうか。
駅のベンチで、たびたび「時計をチラッとみる」男、彼が鉄道員であったのなら、ただの癖なのだから心配しなくてもいいよ。。。と、この女の子に言っておきたい気にもなります。
◆参考にしたサイト等
Wikipedia:赤いスイートピー・松本隆
◆(SeesaaブログではJASRAC管理楽曲の歌詞掲載が可能とされています。)
https://info.seesaa.net/article/409706387.html
https://www.jasrac.or.jp/smt/news/12/1212_1.html
この記事へのコメント
NAO
松田聖子さんといえば、元国鉄職員だった藤井フミヤさんとともに出身地の久留米を思い出します。
出張で立ち寄ったり通過するたびになぜかこのお二方を思い浮かべていました。
どこまでも中継するザ・ベストテンで松田聖子さんはO系をバックに静岡駅新幹線ホームで、チェッカーズは燕三条駅構内の両市境い目で歌っておられたのも記憶に残っています。
しなの7号
テレビをあまり見ない私でもザ・ベストテンは何度も見た記憶がありますが、乗務員時代のことでもあって毎週見られるわけでもありませんでした。その番組で12週連続1位だったという寺尾聡さんの「ルビーの指環」も松本さんの作詞ですし、当時のヒット曲には松本さんが作詞された楽曲は多かったことですから、その番組で松本作品がいったいどれだけ歌われたことか想像もつきません。
やくも3号
松田聖子さんの歌は、そのほとんどが、歌詞からその季節や情景が目に浮かぶものであることが特徴だと私は思っています。
また、青い珊瑚礁のようにいきなりサビの部分から始まる歌もありますが、そこに違和感を感じさせないところが一流の作詞作曲家が携わった曲であるとともに、聖子さんはそこに物怖じせずに堂々と歌いこなすところが、さすがの昭和のスーパーアイドルであることを感じるところです。
現在のミュージックシーンでは、『アーティスト』と呼ばれる方々がメインですが、『アイドル』でここまでの歌唱力や存在感を持って活躍されている方はなかなか見受けられない気がします。
しなの7号
私も、季節や情景が目に浮かぶような歌が好みです。おっしゃるように、松田聖子さんはそういう歌を歌いこなすことができる「アイドル」ですね。松本隆さんは、「この人の声は自分の作る歌詞に合いそうで、いつか縁があったら書きたい」とテレビを見ながら思っていたそうで、実際に書くことになったとき「やった! キタ――(゚∀゚)――!」と思ったと、本文中に触れたラジオ番組の中でも語っておられました。そして松田さんのことを、勤勉で、働くのが好きで、意志が強いとも評していました。
よい仕事をする歌手は、作詞作曲者の心をも動かし、その結果として名曲が生み出されたのでしょうね。