【1507】 5月の歌: 日本国有鉄道5月10日の歌

毎月、その月に因んだ楽曲を1曲ずつ選んで語っています。選曲にあたっては個人的な志向や趣味に偏ります。昭和の時代に発表された曲が多くなると思いますが、必ずしも昭和のヒット曲とも限りません。なお、私は音楽や詩の世界にはまったく通じていませんので、作詞者が描いた世界とは外れたことを語ることもあると思いますがご容赦願います。楽曲や作詞作曲者歌手について知らないことやデータなどはWikipediaとCD等のライナーノーツを参考にします。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

5月の歌は、フォークグループ「ソルティー・シュガー」が歌う「日本国有鉄道5月10日の歌」としました。

日本国有鉄道5月10日の歌

作詞: 池田謙吉
作曲: J.STEINER・B.HAWES

皆さんこれは悲しいお話
新宿駅の西口に石田君という白髪頭の
若い兵隊さんがいた

知らないよったら知るもんか
値上げをするなんて
だけど困ったなったら弱ったな
こりゃーどうしましょう

失業中の石田君お金を借りに行くのこころ
あり金はたいて自動販売機で
30円の切符を買った

知らないよったら知るもんか
値上げをするなんて
だけど困ったなったら弱ったな
こりゃーどうしましょう

ところが駅で降りるとき
改札でとっつかまった
こわい駅員の言うことにゃ
「もしもしお客さんお客さんよ
新宿駅から五反田まで40円だべ
あんたキセルでもするつもり
早く精算してちょうだい」

知らないよったら知るもんか
値上げをするなんて
だけど困ったなったら弱ったな
こりゃーどうしましょう

石田君の財布にゃ一銭も入ってない
駅から出られない
また山手線に乗り込んで
東京をぐるぐるめぐる

知らないよったら知るもんか
値上げをするなんて
だけど困ったなったら弱ったな
こりゃーどうしましょう

値上げをしても日本の国鉄は
世界一すばらしい
サービスは満点 電車は混まない
おまけに事故もない

知らないよったら知るもんか
値上げをするなんて
だけど困ったなったら弱ったな
こりゃーどうしましょう

知らないよったら知るもんか
値上げをするなんて
だけど困ったなったら弱ったな
こりゃーどうしましょう 

◆Youtube: https://www.youtube.com/watch?v=qN6N3mxUCMk

5月は新緑の季節、5月らしいさわやかな曲はいくらもありますが・・・あえて日本の国鉄をモチーフとしたこの曲を選曲しました。歌っているのはソルティシュガー。「走れコウタロー」は子供のころから知っていたのに、こういう曲があることをちょっと前まで知りませんでした。「走れコウタロー」は1970年発表で、「日本国有鉄道5月10日の歌」は、その前年1969年12月発売の「ああ大学生」のB面だったとのことです。
s-PC130051.jpg
その1969年の5月10日には、国鉄の運賃・料金の改定が実施されました。そのとき従来の運賃2等級制が廃止され、一等車がグリーン車、一等寝台がA寝台に、二等車は普通車、二等寝台がB寝台に変更されたのでした。
s-DSC07258.jpg
1969年5月号時刻表は復刻版が交通公社から発行されています。その本文は2等級制のままですが、国鉄の営業案内(巻末ピンクページ)は改正された内容になっていました。

画像は当時の駅に置いてあったチラシです。
s-DSC08003.jpg

この歌詞の中で、あり金はたいて石田君が自動販売機で買った30円の切符は、この運賃改定後の最低運賃であり、新宿~五反田間は7.7㎞(6~10㎞)で「40円だべ」となるわけです。
s-DSC07259.jpg
その運賃改定前はどうだったのか、
前年1968年10月号時刻表によると、2等最低運賃は20円、新宿~五反田間7.7㎞は30円だったので、10円の値上げだったわけです。
s-DSC08004.jpg

このときの国鉄総裁は石田禮助でした。石田総裁はこの1969年の5月10日に施行された国鉄運賃・料金改定の直後5月26日に高齢を理由に辞任しています。そのタイミングからして辞任の真の理由は運賃値上げと無関係ではなさそうに思えますね。
s-057新宿.jpg
この画像は2005年に撮影した新宿駅東口です。(西口の画像は撮影していませんでした。)この歌の主人公「白髪頭の石田君」はその反対側の新宿西口の人ということで、「石田」という名前は石田総裁を意識してのことのように思えます。
このころ巷は、高度経済成長期で物価は上昇し続けていましたが、公共料金である国鉄運賃を改定するには国会の議決が必要な時代でしたから、単純に国鉄の意思で値上げをすることができませんでした。石田総裁の立場は四面楚歌だったのではないでしょうか。後に1977年に運輸大臣の認可で運賃改定が可能になると、国鉄運賃は毎年のように値上げ攻撃が続くようになりました。
歌詞では「値上げをしても日本の国鉄は世界一すばらしい サービスは満点 電車は混まない おまけに事故もない」と皮肉りまくりです。
駅から出られない石田君はどうしていいのかわからずに「また山手線に乗り込んで東京をぐるぐるめぐる」ことになりますから、まさに石田総裁の心中そのものでしょう。

曲のことに戻りますが、ライブ録音になっており、曲調が「走れコウタロー」にも似ていますが、大御所キングストントリオが歌ったボストンの地下鉄の運賃値上げの歌「M.T.A.」が原曲とのことでした。

原曲The Kingston Trio「M.T.A.」↓
◆Youtube https://www.youtube.com/watch?v=a-UcNqrBA_c

そういうことも初めて知りました。
「山手線」を「やまてせん」と歌っていることにも時代を感じます。調べてみると、路線名の読みが「やまてせん」から「やまのてせん」に統一されたのは、この曲が生まれた翌々年1971年でした。

◆参考にしたサイト等
Wikipedia:ソルティー・シュガー The Kingston Trio  M.T.A. 石田 礼助 山手線

◆(SeesaaブログではJASRAC管理楽曲の歌詞掲載が可能とされています。)

https://info.seesaa.net/article/409706387.html
https://www.jasrac.or.jp/smt/news/12/1212_1.html

この記事へのコメント

ブログ内ラベルリスト