【1528】 12月の歌: 12月の雨

毎月、その月に因んだ楽曲を1曲ずつ選んで語っています。選曲にあたっては個人的な志向や趣味に偏ります。昭和の時代に発表された曲が多くなると思いますが、必ずしも昭和のヒット曲とも限りません。なお、私は音楽や詩の世界にはまったく通じていませんので、作詞者が描いた世界とは外れたことを語ることもあると思いますがご容赦願います。楽曲や作詞作曲者歌手について知らないことやデータなどはWikipediaとCD等のライナーノーツを参考にします。

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12月の歌は、荒井由実(→松任谷由実)さんが歌う 「12月の雨」としました。

12月の雨

作詞:荒井由実
作曲:荒井由実
編曲:松任谷正隆


雨音に気づいて 遅く起きた朝は
まだベッドの中で 半分眠りたい
ストーブをつけたら くもったガラス窓
手のひらでこすると ぼんやり冬景色

今にもあなたが 白い息をはき
通りをわたって この部屋に来る気がして

時はいつの日にも 親切な友達
過ぎてゆくきのうを 物語にかえる

もうすぐ来るクリスマス
想い出の日には
また会おうと云った
もう会えないくせに

今でもうしろを ふとふり返れば
あなたが笑って たってるような気がして
時はいつの日にも 親切な友達
過ぎてゆくきのうを 物語にかえる

時はいつの日にも 親切な友達
時はいつの日にも 親切な友達

◆Youtube: https://www.youtube.com/watch?v=oDnsTzLwcqI

1月から連載したこのシリーズも今回が最後となりました。
12月はクリスマス絡みの曲がいくらでもありますが、高校生のころから馴染んでいるこの歌を外すことはできませんでした。タイトルから、12月の歌であることは明らかです。
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初冬の雨が降りしきる朝方の部屋で、クリスマスにはもう会うことはない彼を想っているシチュエーションが切ない歌詞です。そういえば、12月の歌としては、山下達郎さんの「クリスマス・イブ」も有名です。その歌詞には、「雨は夜更け過ぎに雪へと変わるだろう」とあります。そこからは「きっと君は来ない」だろうけれど、もしかしたら来てくれるかもしれないとの、淡く儚い期待を感じます。12月の雪はロマンチックですが、雨は冷たいばかりで、「12月の雨」のほうは「今にもあなたが 白い息をはき通りをわたって この部屋に来る気がして」も、「今でもうしろを ふとふり返れば あなたがあなたが笑って たってるような気がして」も、「クリスマス・イブ」のようなほんのわずかな期待感さえ主人公は持っていないように思えます。
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それなのに曲調は冷たい雨のイメージとは異なり暗い感じではありませんし、歌詞の中でただ切ないと嘆くばかりではなく、「時はいつの日にも 親切な友達 過ぎてゆくきのうを 物語にかえる」という達観とも諦観とも強がりの気持ちとも受け取れる詞がなんとも、今になっても刺さってきます。誰もが一つ一つの物語を紡ぎ続けて前に向かって生きているわけで、それは思うように事が運ばないことの連続であっても、そういう気持ちでいればこそ、どのような苦しい場面でも乗り越えられると思ったからです。それをユーミンが20歳のとき(1974年)に書いていたことになりますが、ふつうは「時」という友達と長く付き合った後にならないと言えるセリフではありません。
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この曲の「ストーブをつけたら」の部分から先はバックコーラスが入ります。特に「時はいつの日にも 親切な友達 過ぎてゆくきのうを 物語にかえる」の部分のバックコーラスが昔からお気に入りでした。この曲のコーラス・アレンジを山下達郎さんが担当し、コーラスにはシュガー・ベイブのメンバー(山下達郎・大貫妙子・村松邦男)が参加していたということは、ずっとずっと後、インターネットが普及してから知ったことでした。このほかにも今となっては大御所として知られているメンバーたちがこの曲の演奏に関わっていたことなど、高校生の頃は知る由もありませんでした。

◆参考にしたサイト等
Wikipedia:12月の雨 MISSLIM 松任谷由実
◆(SeesaaブログではJASRAC管理楽曲の歌詞掲載が可能とされています。)
https://info.seesaa.net/article/409706387.html
https://www.jasrac.or.jp/smt/news/12/1212_1.html
◆1月から毎月連載したこのシリーズはこれが最終回となります。

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